流浪の朝謡@下北沢440

旅巡業のシメの今回のライブ。
流浪の朝謡のライブはいつでもいいのだけれど、ツアーから戻ってきた直後の雰囲気が一番ステキと思う。
もちろん技巧的にはばりばり超絶なんだけど、ただよう空気が適度にゆるくて、事前に打ち合わせしたのかしないのかわからないような混沌とした音の渦がいつの間にかぎゅーッとまとまって、骨太なサウンドが立ち上がってくる様はほんとにたまんない。
で、メンバーそれぞれがときどき、我知らず「楽しー!」って顔してニヤリとしているときがある。
それが見ていてほんとうに嬉しくなる。
で、みんな技巧的に上手い!というところからいい感じに一歩、過剰なんだよね。そこが絶妙。
うまいだけの演奏って、フュージョンぽくなっちゃってスリリングじゃない。
流浪の朝謡はみんな上手いのに、なんだろう、あのスリリングさは。

今回はなんだか楽器トラブルが多いライブで、開始して3曲目にドラムの皮が破れるという緊急事態。張り替えている間、アコーディオンを伴奏に旅巡業のこぼれ話を披露するコーシさん。たいへんなトラブルなのだが、結果的になんか得したような気分にさせられてしまったのはさすが。ドラム張替えが終ったときのロジャーさんの雄たけびもおもしろし。
かと思うと、たしかアンコールのときだったか、アコーディオンの田ノ岡さんが左手のバンドに何かあったらしく、いきなりジャバラを直接つかんで引っ張って演奏し始めた。なんだったのだろーか。そのあとかがんで修理していたっぽいので、もしかしてはずれちゃったのかも。
そういうことがむしろ、いいもん見ちゃったと思えてしまう。
音楽的に破綻することは一瞬たりとも無かったし。

意外とジャズのカバーが多かったのが意外。
山田晃士さんの声ってまったくジャズっぽくないので、彼がジャズやスイングを歌うと何か違う世界が生まれる。
もしかして、もしかしてこの感じ、かなり「歌謡曲」というものに近いのではないかしら。
どんなジャンルでも、自分の声で自分の歌い方で音楽と対峙するのが歌謡曲
曲の世界に合わせない。曲の方を自分の世界に引っ張り込んでしまう。
アイドルなんかそういうものだもんね。まあ、だとしても山田晃士さんの場合は極上の歌謡曲だけどさ。

いんやー、それにしても「アラバマソング」、圧巻でしたなあ。
迫力あって、でもどこかコミカルなところもあったり、胸に迫る言葉もあったり。
あの曲であんだけ魅せて聴かせるバンドがどれだけいるでしょーか。
みんなかっこよすぎます。大人です。やばいです。