山田晃士トリオ

コーシさんはときどき「3バカヘッズ」なるユニット名でライブをされているようだが、さしずめ流浪の朝謡の2ボケヘッズ、福島さんと田ノ岡さんプラスコーシさんの組み合わせでトリオをやるというので、これは見逃せない!と行ってまいりましたは渋谷O-Nest。しかし私、会場をO-Eastと勘違いしていた上に、O-Eastだと思いこんで向かった先がO-Westでびっくり。すぐに気づいてO-Eastに駆けつけたものの、なんか客層が違う・・・と思っていたらトライセラトップスという文字が。うぇええー、どこなんだよ????と見回すに、目に入ったのは7thFloorとO-Nest。7thfloorはなんかぜんぜん違う出演者の名前が書いてあるし、一か八かO-Nestに向かうエレベータに乗ってみたら、ここで正解だったのであった。この日、台風が通過ということで天候も荒れている上、渋谷に降りた時点で出口を間違えて駅の周りを一周してしまった私には、まさにトラップにかかったような出来事であった。もう、汗だくよ。

O-Nestはこじんまりしたオールスタンディングのライブハウス。会場に入る前にバーが併設されていて、飽きたらそこで飲み食いしながらモニターでライブを鑑賞できるような構造になっているらしい。ああ、知っていればもうちょっとなんか、考えていったのにさ。

この日は対バン4組のライブで、テイストも雑多。なぜか山田コーシさんはこういうごちゃまぜな対バンライブに好んで出演される。(好んでなのかどうかはわからないけど、多い気がする・・・。)最初はストリートミュージシャン然とした弾き語り。私は興味が無いので忍耐の時間だったが、それなりにファンはいるみたいで盛り上がっていた。持ち時間30分くらいだったと思うけど、ぜんぶ同じような曲調で同じような歌い方なのがちとツライ・・・。
その後、越路吹雪の歌が流れて、アコーディオン+ギターでチャルダッシュが演奏されたと思うや、おもむろにコーシさん登場し「自称ミュージシャンの山田晃士と自己紹介。そして歌うは「リラの門の切符切り」。ギラギラ、ドロドロ、そしてなぜかちょっと可笑しいという複雑な雰囲気が立ち込める。初めてのお客さん、びっくり、あんぐり、クスクスって感じ。セリフのところはナニゲにBGMが鉄道唱歌(たのおかさん、ナイス!)。力技で一気に会場の空気を塗り替え、あとはもう山田晃士ワールド。歓声が上がれば「掛け声は『ブラボー』と『ハラショー』以外禁止する。」、テアトル蟻地獄で揺れながらお客さんが笑うと「笑顔禁止!」、などなどなど。対バンライブ、初めてのお客さん多数、時間も限られているということからか、「これぞ山田晃士」というお手本のようなステージが続く。面白いように翻弄される客席が楽しい。ミラーボールが回ったりして、強烈な場末感に鉄壁のボーカル、磐石の演奏。下品さと上質さの共存。うう、クセになるぅ。「キミ達に、エイトビートを忘れさせてあげよう。」としつこいまでに三拍子の曲が続く。かっこいいのかかっこ悪いのかわからないカッコよさです。演奏と歌声の説得力が尋常じゃないので、斜に構えて観てやろうってなイジワルな余裕も吹き飛ばしてしまうんですな。無様ささえ着こなす男、山田晃士。やはり、隙が無い人だ。

この日、めずらしかったのはアコーディオンの田ノ岡さんがピアノを弾いたこと。ま、もともとピアノをやっていた人らしいのですが、ご本人が敬愛する三柴理さんへのリスペクトも少しはあったかな、などと思ったり。この曲は「接吻」のブルースアレンジだった。しかしコーシさんの声とブルースは合わない・・・ので、ブルースではない何か不思議なものになっていた。
ラスト、シャンソンの名曲「群集」をガレージシャンソンなアレンジで。盛り上がったぁー。あんなにかっこいい曲だなんて。
このトリオ、またぜったい見たいな。どこかでぜひ再演してほしい。
流浪の朝謡よりライトでガレージシャンソンショーよりヘビーな世界観が絶妙なのだ。

さて、下の動画は下北沢440での流浪の朝謡のライブの様子。この「古い写真」というのがとてもよくって、曲としての完成度が高いので、これはぜひ誰かコーシさん以外の人が歌うのを見てみたい。加藤登紀子とかクミコとか、普通にシャンソン歌手の人に歌ってみてほしい。