流浪の朝謡 根無し草のメロディ@下北沢440

今年の前半より関西ツアー、東北ツアーと回ってきた文字通り「流浪」の皆さん。この日はそのツアーの総決算、ツアーファイナルのライブであった。月例440は必ず対バンありだったのだが、今回は流浪の朝謡ワンマンで。月例ライブは毎回のように足を運んでいる私、いつものつもりで7時頃に会場についたら、あらら、すごいお客さんの数。いつもなら余裕で座れる後ろの団体席も一箇所しか空いてない。さらに、いつの客層は「日常の延長にライブもあるような東京近郊の人々」という感じでハレとケに分けるならば「ケ」のお客さんが多いのに、今回ったら着物の人がいたりして、客席に「ハレ」感が。ひさびさのワンマンということもあるだろうけど、たぶんツアーでファンになってここまで追っかけてきた人たちもかなりいると見た。
時間になるとステージにはバモス福島さんだけが現れ、一人でギターを弾きはじめた。即興と思われる超絶プレイがかなり、かなりしばらく続く。これはこれでかっこいいけど、他のメンバー誰も出てこないけど・・・・???ってな不安感が徐々に漂い始めた頃にコーシさん以外のメンバーがゆっくりと定位置に現れ、ギターに絡みはじめて・・・その演奏もしばし続いて、じらしにじらしてコーシさん登場。おお、ワンマンだけに時間の使い方が贅沢ですなあ。
とか思っているうちに怒涛の演奏が始まって、そのまま3曲くらい疾走。いきなりメインディッシュが出てきちゃったみたいなインパクトです。出し惜しみ無しです。
「この半年ツアーを一緒に回ったおかげで、やっとお互いが目をみて話せるようになった(笑)」とコーシさん。バンドの一体感が飛躍的に増しております。以前が一体感が無かったわけではないんだけど、ミュージシャンとしてではなくもうちょっと「人」として胸襟を開き合う何かがあったのかなと感じられた。山田晃士さんの音楽スタイルには隙とかコントロールできない「間(ま)」を拒絶しているようなところがあると思うのだけど、流浪の朝謡では逆にそういうことを恐れず、むしろ楽しんでるみたいに思える。そういう余裕を、実はメンバー全員が持っているのがこのバンドの心地よさの秘密だろうか。
お馴染みの曲に加えて新曲「サ・セ・ラムール」は山田流ガレージシャンソンシャンソンなのにリズムは行進曲みたいで、歌詞は超ド級にシンプルでおおげさなラブソング。この手の単細胞なラブソング、コーシさんの歌には多いけど、唄い方、アレンジなどなどを見るにつけ、むしろ恋愛に対してつきはなした達観を感じますね。
さて、今回印象に残ったMC・・・といってもわりと流浪の朝謡のときはMC少な目なのであまり無いけど。
・エロ妄想。毎日暑いので、みんな毛穴を広げて生きている。私はきれいなおねいさんと一緒に冷たいシャワーを浴びて毛穴をキュッと縮めたい。そしてシャワーから出たらおねいさんのわきの下と足の指の間に、ラズベリーの香りのボディパウダーをはたいてあげたいそうです。
・東北巡業こぼれ話。昨年打ち上げで大騒ぎして、何かを壊してしまったライブハウスがまた今年も呼んでくれた。とにかく平謝りで、ライブ時のMCも「去年はどうもすみません。では次の曲・・・。」みたいな感じになってしまった。
・これも東北巡業話。とても暑いライブハウスがあって、演奏中振り返るとドラムのロジャーさんが川に落ちた人みたいにずぶぬれになっていた。(汗で)
・楽屋もサウナのようで、ビオレさっぱりシートとかそういったものの消費量がはんぱではない。そのさっぱりシートを早川さんはなぜか「ペチョペチョ紙」と呼び、「コーシ、ペチョペチョ紙ちょうだい。」とか言ってくる。
・福島さんは試食魔。なおかつ食事の後に必ずデザートを食べる。ここ440でも着くや否やプリンを買ってきた。
バモスなのに間違えてマンモスと呼ばれた事件
などなど・・・。
ロジャーさんが川に落ちた人みたいに汗だくになっていた事件はコーシさんの話し方があまりにおかしくて、ライブ終ってからもまだときどき思い出し笑いをしてしまう。
あと、「古い写真」の曲に入る前ふりとしてコーシさんのむかし話が語られることが多いのだが、今回はアルージュ時代にどこぞの山奥のお祭りに呼ばれたときの話。なんと「奥只見ダム」のお祭りに呼ばれたんだそうで。アルージュのハードロックに合わせて、青年団がツイストを踊っていたそうで。この日、たまたま仕事で昼間に奥只見ダムの写真を見ていた私は、ありありとリアルに奥只見ダム堤体のすがたが脳裏に浮かんでしまった。奥只見ダムってこんなのです→奥只見ダム。重力式コンクリート堤体のヘビーでストイックな感じがロックっぽい感じがしなくもないので、まあ良かったですね、奥只見で(?)
いや、ダム話はさておき(好きなもんでついつい・・・すいません。)これでもかこれでもかと駆け抜けた約2時間。なんと、休憩無しでした。唄い続けるコーシさんも凄ければ、演奏し続けるメンバーもすごい。体力、どうなってるんだ。コーシさんは相変わらず声帯まったくヘタらないし。誰にいつアドリブを振っても磐石の構えでがっつり聴かせてくれるし。もー、「しびれるぅー」とはこの感覚のことを言うのかなと、ライブ中に何度も思った私でした。
かっこいい、という言葉の意味を知りたければ、「流浪の朝謡」を観ろ!また、舞台に立つことを生業にしている人は、一度は彼らを観て打ちのめされろっ!・・・いかんいかん、興奮してしまった。
ほとんど完璧、こちらは手離しで楽しむだけ・・・なのだが、ちょっとだけ不満に思うとすれば・・・「押し」の表現が多いので、どっかで「引き」の要素もうまく入れてくれればよいなあ、と。去年、高円寺で初めて流浪の朝謡を観たとき、ハードでヘビーな楽曲の中にさらりと、梅津和時さんのサックスだけをバックにした「フラミンゴブルーバード」が挟まっていたのがなんとも粋で印象的だった。こういう音の層が少なめの曲も1,2曲あると2度美味しいライブになるかと。(私にとって、だけかな?)
というわけで私にとって、流浪の朝謡のライブのイメージは「どんどんご馳走がでてくるフルコース」。「ひええ、もう食べられませんー。おなかいっぱいですー。」って思うんだけど、でもおいしいから食べちゃう、みたいな感じですね。
妖しくて退廃的で、なぜか元気が出るバンド(笑)流浪の朝謡のみなさん。お願いだから、はやくアルバムリリースしてください。レコーディングの時間が無ければライブ盤でもいいですー。好きな曲いっぱいあるのに、ライブに行かないと聴けないのだもの・・・でも、このままライブ専門バンドに徹するのも面白いか?

で、今回初めて観るという人が二人いたので、帰り際におそるおそる感想を聞いてみましたら、ストレートに「おもしろかった!」と力強く一言。「うけとめきれなかったのではないですか。」とたずねたら「いや、受け止めました。」と。いやあ、嬉しかったですね。