山田晃士&流浪の朝謡@下北沢440

いや、今週、寒かったですね。何年ぶりかに38度台の発熱を体験。おかげで6年ぶりくらいに喘息が再発してしまい、ゼーゼー状態の日々でございます。しかし、はずせない流浪の月例ライブ。昼間で寝込んでいたのに、マスクして気張って行って参りました。
この日の対バンはマイア・バルー。ピエール・バルーの娘さんである。「ピエール・バルーって誰ですかねー?名前は聞いたことあるけど。」なんて、開演前に「ま」さんとデカい声で話していた私、帰宅してから調べて赤面。な、なんと、クロード・ルルーシュ監督の名画「男と女」のテーマ曲を歌ってた人だぁ。それに映画そのものにも、アヌーク・エーメの元夫役で出ていて、実生活ではアヌーク・エーメと結婚していた。(その後離婚してるんで、マイア・バルーはエーメの娘ではないが。)いやー、あんなデカい声で知らないとか言っちゃって、それも「サブカルチャーの聖地」下北沢で・・恥、恥、恥・・・・。
何はともあれマイア・バルー。バンドはパーカッションとベース、つまりリズム隊のみの構成。彼女はボーカルとときどきフルート、そしてパンデイロ(タンバリンの親方みたいな・・・)。アフリカンビートっぽいドンドコしたリズムに絡むボーカルの声がなんとも言えず、イイ。なんていうかな、ちょっとハスキーで系統としてはUAの声なんか近いんだけど、もっとあったかくて線が太く、聴く者を包み込むような包容力がある。唄うだけではなくジャングルの闇の動物のように吼えたり唸ったりもするが、ワイルド一辺倒ではなく、フランス語でシャンソンっぽい曲もあったりしてコケティッシュでもあり洗練されていて、一筋縄ではいかない。のびやかでしなやか。大自然の気を体いっぱいに取り込んで、発散しているみたいなちょっとシャーマン的なパワーを感じるステージだった。アメノウズメってこんな感じだったのかもねぇ。こういうのって、女性ならではっていうか、男性ボーカリストだとどんなに巧くても、こういう味わいにならないんだよな、不思議なことに。いかに超絶ボーカリスト山田晃士御大でも、この領域は無理だ。アフリカのリズムと島歌を合体させた曲が圧巻。元ちとせみたいな唄い方もできちゃうんだが、彼女の持つような陰りは無くマイア・バルーはあくまで陽性。切ない感じにはならない。いやー、咳でぐだぐだだった私だが、すっかりパワーをいただきました。
ラストの曲が終わった後、パーカッションのメンバーの先生だという人(黒人)がいきなり客席から上がってきて、ひとしきり太鼓セッション。舞台の隅にパソコンが置いてあり、なんとSkypeセネガル(だったかな?)の奥様に映像をリアルタイムで見せていたのだそうで。なんかリベラルで型破りで無国籍、それでいてオシャレで小粋で洗練されてて、パワフルでプリミティブな魅力的なステージだった。たぶん文章では説明不能。また観たい。できれば女友達と一緒に。暑い国のお酒を飲みながら。一応動画を見つけたので貼りますが、この映像で観るほど妖しい感じでなく、もっと生命感あふれていてポジティブでした。

さ・て。お次は待ってました!の流浪の朝謡。昔、「戦場のメリークリスマス」のキャッチコピーで「男騒ぎの・・」ってのがあったが、最近流浪の朝謡の皆さんを見ていると、この言葉が浮かびますね。みんな、絵になるエエ男♪思うに、いわゆる演芸ばかり見ていると審美眼に歪みが発生するような気がする。たまにこーいう人たちをみて、バランスとらないとねー。
いきなりバモス福島のギターインプロにのせて、コーシ様のポエトリーリーディングから始まった。前回に引き続き、バンド全体がいいノリになってきていることがよくわかるグルーブと疾走感。くされ縁の歌ではジャンプする振り付けがあり、コーシさんと一緒にトランペットとアコーディオンがジャンプ。後のMCでコーシさん「ジャンプしながら唄うのって難しいね。」
うなづく田ノ岡サブさん。
「精進が必要だね。やめる?」
「いえ、飛びます飛びます!」(と田ノ岡さん)
「・・・なんか坂上二郎みたいになっちゃったね。」
なんて会話もありつつ。高校時代の虚言癖のある恋人と親友との壮絶な思い出(なぜか親友の名をヘンゼル、恋人の名をグレーテルと仮定して。)から「古い写真」(タイトル不明だけど)の曲への流れの美しさ。マイア・バルーとの共演を意識して何かシャンソンを・・・ということで披露された「パリの空の下」のとてもハードでアグレッシブな流浪の朝謡バージョン。あんな「パリ空」、金輪際お目にかかれないだろう。途中、バモス福島のギターの音が出なくなるハプニングも。無表情で困っている福島さんに、容赦ないコーシさんのいじりが面白かった。てか、こんな窮状をもエンタティメントしてしまう山田コーシの才覚に拍手!この日、大好きな「へび年」が聴けたのも嬉しかったなー。しかし早くアルバム出してくれないと、ライブ以外で曲が聴けない上、正式なタイトルもわかんないよー。
どんどんバンドとしてのまとまりを見せてくる流浪の朝謡。バランスも見せ方も見るたびに完成されていくようで、こっちもぞくぞくする。しかし心配なのは、完成されてしまうと山田コーシさんという人は、あっさりやめてしまったりしそう・・・・。「ガレージシャンソンショー」のときもそうだったし心配でやんすぅー。

あまりに咳がひどくて本当に意気消沈していた私だったが、終わって帰るときには心がほかほか・・・を通り越してめらめらしていた。元気出そっ!がんばろっ!ってなんで思えるんだろう、コーシさんの歌の後って。どっちかというと退廃キャラなのに・・・。ホントに不思議だ。

<追記>あとで思い出したこと。
・今回の自己紹介「いつの日かおむかえが来たときには・・・モックンに送られたい。そんな気分のポップでキッチュなガレージシャンソン歌手、山田晃士に憐れみと拍手を。」
・ステージ上からマイア・バルーをくどき「やだよ!」の一言でふられた時、「もうちょっと表現にのりしろがほしいね。」(婉曲に、の意味らしい。)
・マイア・バルーのステージを見て「無国籍な感じ」と評し、「それにくらべて流浪の朝謡はなんて日本のバンドなんだろうと実感した。これからJPOPを目指します。」この後、JPOPのチャートの話になったが「JPOPのチャート」という言葉の響きの可笑しさに、なんども噴出していたコーシ様。気に入ったらしく、何度も繰り返して使っていた。
・そのつながりで、「ちなみにJPOPのチャートで9位に入ったことあるよ、JPOPのチャートで。」と。かの「ひまわり」のことに言及。大ヒットと言えなくもないのに、なんかあんまりいい記憶になってないみたいですねー。

これ、今とぜんぜん声が違うけど、本人の声なのかしら・・・?