まとめがき8月

振り返ってみると8月、慌しかった割にはライブらしいライブを観てない。血中ライブ濃度が薄まっているせいか、倦怠感にさいなまれている上、夜出る用事が多くて連日のゲリラ豪雨にも毎日濡れて帰り、さらに気力を奪われ、けっこうテンション低い晩夏の私。
あーはやく、秋になって涼しくならないかな。もう雨も湿気もうんざり。

<三味線大酋長 Vol3>
下北沢のニューオリンズバーにて三味線弾き語りライブ。すでに3回目を数えており、私は二回目の鑑賞。たまたまお店の常連さんに常磐津の人間国宝の娘さんがいたそうで、なんかやったら?みたいな話になって、こーゆうことになったらしい。これがめっぽう美貌のお姉さんでほんとにびっくりよ。今は三味線のお仕事はしておらず、普通の勤めをしているそうだ。
1時間くらいのミニライブで、だいたい30分くらいレクチャー的なお話、後半の30分くらいが演目というような構成。ちょっとこのとき何をやったのか、いただいた資料を紛失してしまったので忘れてしまったが、遊女のでてくる話だったので、ということで美容院でおまかせしてやってもらったという髪型がすごく印象的でこっちの方はしっかり憶えている。両サイドを膨らませたいわゆる日本髪なんだけど、カジュアル感があるっていうか、きっちり作りすぎてなくて遊びがあって、かっこよかったのだ。日本髪っていうとお嫁さんのしか知らないからねえ。
こういう伝統芸能をカジュアルに楽しんでもらおうという試みは、内容を工夫しておもしろくしてもらうのも一つだけど、こんな風にビジュアルから入るのもあり。特に女子的には興味津々なのだ、ファッションにまつわる部分は。
そのとき写真を撮らせてもらったが、一応プライバシーがあるのでここには載せないぞ。
お姉さん、三味線を教えてくれるそうなのだが、教えてくれる曲の中に「野球拳」があった。私は弦楽器コンプレックスがあるので(ギターを習ったとき、指先が水泡だらけになった。ウクレレやってみたが、チューニングがダメ、押さえ方が下手でしょっちゅミュートしてイライラ・・・などなど。)、三味線には触ってみようと思ったことも無いが、この「野球拳」にはちょっと心動きましたね。

<山田晃士&流浪の朝謡「モノローグ劇場」>
思えば、伝説の(?)「おきらくシアター」で出会った芸人さん、アーチストの方々は後を引く人が多くて、あそこで初めて見てその後単独でも追跡するようになった人は多い。見た人数が多いわけではないので、おそるべき高確率である。山田晃士もその中の一人。ファンは彼を略して「山晃」と呼ぶようだ。ヤマコー・・・。ポップでキッチュなガレージシャンソン歌手。長身、ロングヘア、少女漫画にでてくる悪魔みたいな風貌。
これまで誰かとのブッキングでしか見たことが無かったので、バンドとはいえ山田晃士名義のライブにでかけるのは初めて。彼のファンばっかりいるライブは初めてってこと。ドキドキ。
会場は高円寺ShowBoat。妹がこの界隈に住んでいたので、遊びに行くときによく店の前は通っていた。当時はビジュアル系バンドも出ていたみたいで、黒づくめの女の子が道路にまであふれかえっていることがあって、「うわ、なんだなんだ???」とか言いながら、その前の酒屋でお酒買ったりしていたものである。ダクト這い回る天井。やすっぽい飲み物しかないドリンクカウンター、スプレーで落書きされたトイレのドアなどなど、いまや古典!と言えそうな絵に書いたようなライブハウス。お客様は女子率が非常に高い。20代〜30代の、オシャレで美人でちょっとハスッパな感じのお姉さん達(いや、私の方がトシなんで、お姉さんていうのもなんだけど、タバコとか吸われると「お姉さん」て言いたくなっちゃうのよね。)
この日はザッハトルテアコーディオン、都丸智栄(とまるともはる)がゲストということもあって観にいった私。ザッハトルテといえばどっちかというとカフェミュージックなおとなしめの音楽のイメージなので、山田さんとの組み合わせが想像できなかったからだ。しかし都丸さん、しっかり壊れてた。パンチの効いたミュゼット。肘や膝で弾いちゃうパンク精神。スタイルとしてはやはり、ガレージシャンソンショーの佐藤芳明クンを彷彿。山田さんと一緒だと、そうならざるを得ないのでしょうか。
山田晃士ワンマンではなく、流浪の朝謡というバンドとしてのライブである。音楽性はジプシー音楽をベースにしたロックというのでしょうか。ラテンもあり、アラブ系もあり、バルカンもあり、クレツマーもあり・・・リズムが複雑で変態的。ポップ・ロック以外のすべての音楽ジャンルをごった煮にしたようなスリリングなもので、そのカオスを山田晃士のボーカルが力強く引っ張っている。あいかわらず変幻自在、ミュージカル並みの声量でほぼ90分、ぜんぜんヘタらない声帯がすごい。唄っているときの表情が面白くて目が離せない。こんなに顔を見てるだけで面白い歌い手もいないよね。また、ほんとうに心底、幸せそうに唄う人なので、風貌もサウンドも妖しく退廃的なのに、なぜかライブの後は妙にポジティブになっていて、「よし、がんばろ!」って思えてしまう不思議。今まであんまり気にしなかった歌詞を今回はけっこう意識して聞いてたが、堕落的な言語感覚でありながら、実は前向きでアグレッシブな歌詞が多い。しかも、一度地べたに叩きつけられたことがある人しか描けない前向きさだ。この人、案外苦労人?
この日は都丸さんの他に「こまっちゃクレズマ」の梅津和時さんもゲスト。この人のキャラがまたファニーで、なんともいえない。こまったような顔の小さなスキンヘッドのおじさんで・・・。山田さんに「私の大好きな大好きな大好きな男性です。」と紹介されていたくらいキュートでいい塩梅なのだ。Saxとクラリネットで参加。この人のSaxでの「フラミンゴブルーバード」絶品でございました。
Saxとアコーディオン、それぞれの楽器の奏者であるゲストを生かして、インストゥルメンタルの演奏があったのもよかった。奇数拍子の迫力あふれる高速ジプシーチューン。たぶん7拍子。数えられた自分がちょっと嬉しい。
ちょっと、もうだいぶ細かいところ忘れてしまったんだけど、ゴージャスでリッチで、デカダンスでヨーロピアンでアラビアンでジプシー風で、シニカルでスリリングでパワフルで、・・・・なおかつ笑えるというすっばらしく贅沢なライブでございました。すっごく変!なのに、安心して見られるのは、すべてにおいてバランスがいいからだ。やりたい放題やっているようでいて、ステージの上の自分を客観的に演出しているもう一人の自分がいる。心の中に舞台監督を飼っている。山田さんってそーゆう人のような気がする。
山田晃士・・・芸人ではないんだけれど、ミュージシャンという枠の中にはおさまりきらない人であることはたしか。とにかくショーマンシップのある人だ。
いやー、9月16日の「メルシー兄弟」が待たれますなぁ。

すっかりはまった私は、ガレシャン時代のCDがほしくなり池袋HMVへ・・・。しかし、当たり前のように置いてなくて、結局アマゾンで買うハメに。
以下の2枚を買わせていただき、ただいまヘビロテ中。
「いざすすめよいばらの道を」「トモダチ狂想曲」なんか、とてもイイけど、はからずもボーナストラックの「ひまわり」に涙がこぼれてしまった。シンクロする歌詞なんかひとつもないのに、不思議。シンクロしたとしたらその声と、アコーディオンの和音。この曲だけ、他の曲みたいにギミックな声の出し方をせずに、ストレートに唄っているので、まっすぐ入ってくるのです。この唄の歌詞のようなことを、言われる女でありたかったなあと、そんなことをしみじみ思うわけで。

狂歌全集 ガレージシャンソンショー

狂歌全集 ガレージシャンソンショー

ガレージシャンソンショー

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