昭和怪し芸人伝「アチャラカ荘の人々」

えー、まりしろに投稿した分だけど、とりあえずそのまんま載せます。

コメディオンザボード+シアターX提携講演 〜昭和・怪し芸人伝〜「アチャラカ荘の人々」

遠峰あこさんというアコーディオン弾きの女性がいます。芸人さんではないのですが、着物姿にHornerの小さなアコーディオンを携えて、元気一杯に民謡や端唄、俗曲を唄って聴かせるちょっと面白いミュージシャン。イキのいい感じが気に入って、けっこうここんとこご贔屓です。
そんな彼女から届いた月例のライブ情報メールの中にこのお芝居の情報がありました。コメディオンザボード 〜昭和・怪し芸人伝〜「アチャラカ荘の人々」。タイトルからして気になるではないですか。コメディオンザボードはマルセ太郎さんの作品を公演し続けている劇団。あこさんも少女歌謡漫談「うぐいす姉妹」の片割れとして出演するとのこと。どんなもんかしら〜と出かけてみました両国はシアターX。

舞台には右に2階建て、左に平屋のアパート。下町の路地裏風のいかにも昭和30年代テイストな舞台セット。そこにはブラボー楽団という芸人集団と、そのマネージャー的な男とその家族が住んでいるという設定。ドタバタの人間模様が繰り広げられたかと思うや、暗転があって急に舞台上に屏風が出現し、芸人が芸を披露、というパターンでお芝居は進行します。芸人さんといっても演じているのは役者さん。役者さんが芸人の役として芸をするという不思議なシチュエーションでした。
ジャグリング、腹話術、ストリップ、腹話術、腹芸、浪曲、奇術・・・・などなど、本職の芸人さんに指導を受けて稽古しての成果だとは思いますが、皆さんかなりしっかり身につけていて、ちゃんと芸としてもウケていました。さらにその芸が終わっても芸人役としての演技は続くのですから、役者さんってホントにすごい。とくに奇術師松竹斎まさ子役の矢野陽子さん、浪曲師浪花家松太郎役の里村孝雄さんなどは玄人はだしです。

私のお目当て、遠峰あこさん演じる少女歌謡漫談「うぐいす姉妹」もよかった。おっとりして可愛いけど「お姉さまはブサイク」などとツラリと言い放つツッコミ妹役の遠峰あこさん、ギターがへたくそでおブスだけど「私は美人」と言い張るボケ姉役の澤山佳小里さんの息もぴったり。アコーディオンとギターで「野毛山節」「東京節」「東京のバスガール」「田舎のバス」など唄を挟みながらの昭和っぽいテンポの漫談。いやー、このまま営業まわれそう。「うぐいす姉妹」名義の出演があったらまた見たいですね。(そう思ったのは私だけではなかったらしく、後日あこさんからいただいたメールによるとその後「うぐいす姉妹」名義でのお仕事の話がたくさん舞い込んでいるとのこと。)

三丁目の夕日」的な時代背景ではありますが、お芝居は最後までドタバタと進んでいき、ウェットに感動させるところは無し。いい加減で適当でしたたかでたくましい芸人たちのキャラクターにあきれながら、でも愛しさを感じずにいられない。
「みんな、面白い人だから芸人になったのかな。それとも芸人になったから面白い人になっちゃったのかな?」
ラスト近くにあったそんなセリフが印象的でした。

ラストシーン・・・100歳になった松竹斎まさ子の記念パーティで、浪花家松太郎とアチャラカ荘では芸人のプロモーター役だった吉崎が再開するシーンがあるのですが、これ最高。全員年をとってしまっているから、体はうごかないし、頭はちょいボケちゃってるし、杖が無いと転んじゃうし、転んだ相手を起こそうとして地面を見つめ、「そこまでだいぶ遠いな〜。」なんて躊躇したりするし、花束を渡す相手を間違えたりするし、渡された人も「こんなのもらうと悪いから。」って言って返したりするし・・・。その時分にアチャラカ荘の住人にはもう亡くなってしまった人もいるので、普通はもっとしみじみした演出になりそうなものだけど。最後の最後まで見事にアチャラカ。
そしてワーッと笑った後、まさ子の奇術のシーン。クエスチョンマークの描かれた箱の中から取り出されるのは往年のアチャラカ荘の住人達の思い出の品々・・・そして徐々に暗転しておしまい。最後は全員でてきてブラボー楽団のテーマソングを唄って、フィナーレ。
いやあ、ほんわかしてニコニコ。ひさびさに後味のよいものを見たって感じです。
愛すべき「しょーがない人々」に乾杯!です。