べらぼうにぶらぼう

ひょんなことからチケットが流れてきて、たまたま行くはめになった柳家喬太郎さんと長唄の伝の会によるコラボレーション。
多分、自分では進んでチケットを買うことは無かったであろう会であるが、それだけに新しい発見もいろいろ。
全労済の文化事業の一環だそうで、開演前に出演者によるPRビデオが流れた。柳家喬太郎さんの顔はわかったが、後の2人のお笑い芸人は誰だろう?と思っていたら、ステージが始まるとその人たちは三味線を前に正座していた。
えっ、コメディアンじゃなかったんだ?びっくり。
伝の会のお2人だったのでした。
長唄三味線と聞いていたので唄が入るのかな?と思っていたら、ずーっとインスト。「長唄」って唄じゃなくてジャンルなのね・・・。
スリリングでトリッキーな魅せて聴かせる演奏。津軽三味線から三味線に興味を持った人なら、この感じは入りやすいだろう。
最初は2人弾きだったのだが、途中から義太夫三味線の女性を迎えての三重奏。この太棹ってヤツの音がたまりませんね。しびれます。
粘りのある音っていうかゴムっぽい弾力を感じる太い音で、これを女性が奏でるっていうのがまたいいのだ。
女の人が重量感のある楽器を操っているのってかっこよくて好き。ギターよりベース、ベースよりドラムの女性がかっこいいと感じてしまう私。

演奏の後に喬太郎師の「転宅」
私はこの人の落語はそんなに何度もみていないんだけど、いままで観たのは全部新作だったから、彼が古典を演るのを観るのは初めてかも。
新作は変則的なものが多いので、今回意外とオーソドックスに感じた。
泥棒が忍び込んだ家で残っていたごちそうを食べて「旨い!なんだかわからないけど旨い!なんだかわからないけど酒に合う!」っていうセリフが妙にツボにヒットして、最近の私の流行語大賞となっている。
相手の女のキャラクターがまだ曖昧なのかな。かわいいのか魔性なのか年増なのか若いのかつかめないまま。
「転宅」って初めて聞いたが、ストーリー自体にかなり無理がある話。そこに説得力を与えるか否かはこの女のキャラにかかってると思うから、難しいよね。

後半はめいっぱい使ってコントを。
それも生半可でない舞台装置。お金かかってるぅー。
すごかったのは「仮想音響装置」。ステージの上に小さな舞台のようなものがしつらえてあって御簾のような幕がかけてあり、周りに「落語」「義太夫」「演歌」「長唄」などと書いてあるボタンがついている。そこを押すと舞台が人を乗せたまま前にせり出してくる仕掛け。
長唄」は当然伝の会の2人なんだけど、喬太郎師が調子に乗ってリモコンの早回しや一時停止を乱発。そのたびに演奏を早くしたりストップしたりするのが見事すぎて爆笑。逆回しはできなかったらしく、次回の課題とか言われていた。
「落語」ボタンを押したら前座の落語、を伝の会の鉄九郎さんが。ムダに明るく声を張るいかにも前座な演技が絶妙。でもすぐにリモコンで引っ込められちゃった。「義太夫」はゲストのお姉さんともう一人のお姉さんが2人で。などなど。
この仕掛けが面白かったぁ。
その機械が置いてあるのは町のスナックという設定なのだが、そこのママ役の女性がさりげなく存在感があって上手だなーと思っていたら、やはり女優さんでした。
あと、喬太郎師の着物のぐちゃぐちゃぶりが感動的。あれはあれで絵になっててある意味すごい。動くギャグマンガ。赤塚富士夫の漫画に出てきそうだよ・・・。

全体的にけっこう手が込んでいて、丁寧に作っている感じがよかった。
っていうのと、伝の会の人たち、コントうますぎる!ホントに本業が三味線奏者なのか?余芸とは思えない余裕と味があってなかなかだった。
畑違いの仕事をしているのに、観るものを不安な気持ちにさせないのはすごい。キャラも立ってるし。
うーむ、きっと好きなんでしょうね、お笑い。