ビデオジャーナル35

先日パソコンを新調した。7年来使っていたME機がとうとうお亡くなりになったからである。
「とにかく安いのください!」と店員に懇願し、手に入れたHPのXPマシンはバンドルソフトがほぼゼロのすっきり仕様。(Officeも入ってないのだゼ。)
しかしネットができれば十分な私、今のところ不便は無い。
それどころか、この前までがこの前までだけに(メモリ64MBのWindowsME)、もう動画なんかが快適で快適で、ネットラジオも快適で快適で、ついつい寝不足。んー、シヤワセだ・・・。
というわけで「RIMO」も心置きなく楽しめるようになった。「RIMO」とはこの「はてなダイアリー」でやっているサービスのひとつで、YouTubeの動画を自動的に連続再生する機能である。YouTubeの動画は基本的に自分で探してクリックしないと見られないが、人間そんなに積極的に見たいモンが決まっているときばかりでもない。テレビみたいになんとなく動画を流しておきたい・・・そんなニーズに答えて作られたらしい。
RIMO」には個人的に動画リストを作って「番組」として登録することもできて、いろんな人が自分の趣味嗜好で集めた動画リストを公開している。今回紹介するPVは、そんな番組を見ていた中で出会った作品である。
その番組には「奇妙なプロモーションビデオ集」とタイトルがついていた。「奇妙な」という言葉に弱い私は迷わずクリック。いきなり始まったのがコレだった。クリス・カニンガム監督の「ラバージョニー」である。
(警告!マジで気持ち悪いので、自信が無い人は見ない方がよいです。)

うげげげげ・・・と思いながらも、映像に巧みな緩急があり、目を離せずに最後まで見てしまった。その上見終わるともう一度見たくなるみょーな余韻。リズムに乗ったジョニーの体が残像だけになるところなんかはフランシスベーコンの絵みたいだし、最後の頃のぐちゃぐちゃのシーンはシュワンクマイエルの映像のリアル版みたい。グロテスクというのは抗いがたい魅力をたたえた存在。「不快でありながら快感」というアンビバレンツな興奮を与えてくれるんでありますね。

しかし、私がこの映像にはまったのは、別段グロの魅力だけではない。
ネットで調べた情報によればこの映像のテーマは「異様に活発な、姿形を自在に変えられる突然変異の子供=ラバー・ジョニー。地下室に閉じ込められながら、熱にうなされたかのような想像力を駆使して、恐れおののく犬を相棒に、暗闇の中で自分を楽しませる術を獲得していきます。」といったもの。
早い話が幽閉された奇形の子供が、退屈しのぎに行う一人遊びの様子なのだ。
「奇形の」「突然変異の」というところに着目すると気持ち悪さが際立つが、「子供」という点に注目してみてみるとどうだろう。
まさに一人遊びに没頭する子供の姿が浮かびあがってきはしないか?
子供といっても思春期、中学生くらいのね。
実際に踊ったり暴れたりするのでなくても・・・そうだな、風邪かなんかで熱を出して寝ているんだけど頭は冴えていて眠れず、退屈でこっそりラジオを聴いたり本を読んだりしているうちに、頭の中は妄想と想像の世界を駆け巡り大興奮。そこを親に見つかって「何やってんの!はやく寝なさい!」って怒られるときの感じ。
(実際にこの作品はクリス・カニンガムが子供の頃、4ヶ月ほど入院した体験を元にしているそうだ。)
この映像の中でも「うるさい!静かにしろ!」的にラバージョニーが親らしき大人の男に怒鳴られているシーンがある。そのときのジョニーのたたずまいの、なんと「子供」らしいこと。膝の上の手の置き方や全体のたたずまいが、叱られている子供そのもの。こんな風体の生き物をこんな風に撮れるなんて・・・カニンガムの繊細さに恐れ入る。大人の怒号に戸惑う子供の姿がそこにきちんと垣間見える。
逆に、思春期の子供なんて、大人にとってはこんな怪物みたいなもんなのかもしれないね。
そんな風に思うようになってから、冒頭のジョニーのパチパチまばたきする様子や、「マンマ、マンマ・・・。」と言う様子が可愛く見えてきちゃって困る。

クリス・カニンガム、この人もケンイシイと同じく1970年生まれです。恐ろしや。

<追記>
素人さんによるパロディを発見。クオリティはともかく、一応完コピなんでスゴイ。
しかしこれぞ、まさに少年の一人遊び。
実はジョニーのやってることと本質は変わらない。
それにしてもおバカだね〜・・・・。