柳家小春・遠峰あこ二人会@円盤

記録的な集客(悪い意味で)だった先日のおきらくシアターにて、その奇天烈プリティな存在感で私に強烈なインパクトを残した遠峰あこ嬢。またどこかでじっくり見たいな・・・と思っていたら、その日にいただいたチラシにこの会が入っていた。
柳家小春さんは柳家紫文さんと同門の姉弟子にあたる人。ゲストを一人呼んでゆるゆると弾き歌うという会を毎月、長いこと続けているらしい。かの上野茂都さんもかつてゲストに呼ばれた一人だ。また、巻上公一氏(昔ヒカシューというニューウエイブバンドのボーカルだったが、最近は民族音楽研究家としての顔の方が有名かな。)とコラボったりするなど、なかなかモンドな音楽的志向をお持ちらしい。
会場の円盤は中古レコード屋兼イベントスペース。ライブ中にも買い物客が入ってきたりするゆるい雰囲気。時間ぎりぎりについてみると、店中の椅子を寄せ集めて作ったような、だいたい20席くらいの客席は満員。男性客の比率が高く、それもなんか文学青年風の繊細そーな感じの人が多かった。む、私の持論「文学青年は奇天烈な女が好きの法則」に当てはまる例だろうか。

開演まで舞台(といっても舞台スペースっていうか・・・客席と床の高さは同じ)でじっと目を閉じていた小春さん。時間が来るとゆったりと三味線を手にし弾きはじめ、端唄小唄を何曲か。邦楽特有のピリッとした緊張感が意外と感じられなくて、音にしても歌声にしてもどこかやわらかい感じ。ちょっとハスキーな声のせいね・・・と思っていたら、風邪で声帯が腫れていてそういう声になってしまうのだとのこと。いつもの声とは違うのだそうだが、これはこれでいいよーな気がした。ソフトな感じでね。
数曲引いた後「ぎっちょんちょん」の歌詞を変えて「あのコよい子だアコーディオンしょって・・・」と歌って遠峰あこさんの出番につなぐ。
目の前で見る遠峰あこさんは意外と大柄で和風顔の女子。パステルっぽい黄色の着物にオレンジの帯。それはそれで女の子らしい感じでいいのだけど、わりと長身なのでもう少し大人っぽい感じかビビッドな色の方がより映えるような気がした。携える楽器はたぶん48ベースのアコーディオン。小さいのにものすごく鳴りが良い楽器なので、ずっとメーカーが気になっていたのだが、近くで見たらHornerであることが判明。足首にはリズム用の鈴をたくさん巻きつけて。
民謡がとてもすきなのだそうで、この日も「木更津甚句」に始まり「こきりこ節」など有名どころの民謡、それからマイナーな民謡、さらにアンデス民謡まで、解説を交えながら。MCは照れくさそうにはにかみながらトツトツと・・・という感じなのだが、歌いだすとのびのび元気、力強い歌声でびっくりする。また、壮士演歌、大正時代の歌謡曲なども好きということでいくつか。「美しき天然」「東京節」(いわゆる「ぱいのぱいの節」です。)なども。とにかく民謡から歌謡曲までを含めた「俗謡」が好きなんだろう。いうなれば俗曲師ならぬ俗謡師?
好きすぎて作ってしまったオリジナル民謡「横浜ホーライ節」で彼女のワンマンタイムは修了した。

あこさんの後に再度小春さんが出て、端唄俗曲を思いつくままに・・・・という雰囲気でおしゃべりを入れながら40分くらい。
そのあと、二人でコラボということで三味線とアコーディオンによる俗曲と民謡の競演。
「さのさ」「東雲節」「奴さん」「野毛山節」など。
「東雲節」「奴さん」でボーカルをとったのはあこさんの方だったのだが、発声が邦楽風でないので新鮮で面白かった。「てなことおっしゃいましたかね〜」って歌詞があるんだけど、彼女の歌い方だとなんかいい感じのふてくされ感が漂う。逆に「野毛山節」は小春さんがボーカルを。ばりばりの民謡なこの曲が、さらっとした小唄風になってこれもおもしろかった。
また、2人がときどきトークしながら進めるのだが、二人ともポワーンとした話し方で、聴いているうちにいい気持ちになって眠りそうになるような。春の陽だまりのような雰囲気でしたねえ。
昔テレビで見た、西村知美佐野量子の対談を思い出しちゃった。

ところで私はこの会に来る前に、遠峰あこさんのことを何人かに「面白い人がいるよー」ってお奨めしていた。そしたら2人、見にきてくれたのでした。
芸人さん達、お客が少ないからといって手を抜いてやるものではないぞ。どんな状況でも全力投球すればお客はちゃんと見ていて、それが面白ければ次回は人をつれてくる。客は客を呼ぶのです。

なんかこの日にやった曲にちなんだ動画でも貼るか、と探してみた。こんなのどう?江利チエミ