ニヤリと笑う、クスリと笑う

まとめメモに書いた後、やっぱりこのライブに関しては独立したアーティクルにしたいと思い直した。
代官山にある「晴れたら空に豆まいて」という奇妙な名前のライブハウスで行われた「ニヤリと笑う、クスリと笑う」というライブ。
私がこのライブのブッキングを知ったのは9月頃だったと思うが、顔ぶれを見たとたん「これは行かねば!」と決意。いやー、奇跡のブッキングってあるもんだ。なんと山田晃士と伊藤多賀之が競演!
それぞれ個別に好きだった私にとってはもう夢のような顔合わせなのである。もう、10月頭には予約を入れていたっけ。ライブが11月末なのに・・・。

会場の「晴れ豆」、代官山駅から出て数十秒という立地にある地下二階。ステージが無ければアジアン風無国籍ダイニングバーといった感じかな。客席はステージの方を向いているわけではなく、レストランのように丸テーブルがいっぱいあって、その周りに椅子がある。でも桟敷席があったり、壁に沿ってベンチのような席があったりいろいろ。私はくつろぎたかったので、さっさと桟敷を占拠。
ステージはすごく奥行きがある。グランドピアノがおいてあるのに、その手前でゆうに3人並んで演奏できるという・・・。ライブ演奏の合間には、ステージのバックにBGV的にフランス映画の映像が流れていた。
あ、料金にドリンク代も含まれていたのだが、ドリンク券として渡されたのは白い小石なんですよ。これがこの店の中では通貨。なるべく現金を見ないで済む方が、現実から離れられるから、こういうのもいいね。

伊藤多賀之
おなじみの曲に加え、1月にニューアルバムがでるそうで、その中から何曲か。サポートメンバーにパーカッションとギターがいたのだが、パーカッションの人(男性)が黄色いカツラに紫のドレスにすごい化粧。伊藤くんに「美輪アキヒデ」と紹介されていたが、その姿で大また開いてカホンに座ってフツーに叩いているのが可笑しかった。
印象的だったのは新曲「元栓」。ガスの元栓を締めてきたか気になってデートに集中できない女と、家に帰ってやりたい趣味があってやっぱり集中できない男の歌、「ふたり仲良く上の空〜」というフレーズが秀逸。また、「音楽チャートで一位をとりたけりゃお金を渡せば意外と取れる〜」という歌詞で物議をかもした「生活の知恵」、歌いはしなかったものの、歌詞の紹介だけで十分わらえた「グロリアス完全版」伊藤多賀之、ここにあり!って感じの歌ばっかり。
(ちなみに「グロリアス完全版」は「グロリアス=グロテスクなリアス式海岸」」「ペナルティーペルシャ猫顔のナルシストなティーチャー」「イラスト=イラン人のストッキング姿」などという言葉遊びの歌です。)
しかし、ちょっと今回MCがさえない感じだなと思っていたら、なんとものすごく体調が悪かったらしく、ステージが終わったら病院に直行だったそうだ。んー。歌った曲の中に「病院」ってタイトルの曲があったんだけど・・・皮肉みたい。
いまひとつ、彼の魅力が伝わりきらないうちに終わってしまったのが残念。でもラストの曲が私の好きな「ミジンコフェチ」だったので嬉しかった。

柴草玲
この人についてはぜんぜん知らなくて、今回まったく前提になる情報も無い状態で観たのだが、今回一番のメッケ物だった。まさに出会ってしまった〜!!!!という感じである。
ストレートのロングヘアにベレー、ミニのワンピースにロングブーツ、全身黒づくめで現れたその女性、面立ちや雰囲気はちょっと山崎ハコのような・・・アンニュイで陰のある独特の雰囲気のある女性である。血圧低そうな感じである。一言のMCも無く演奏が始まった。
昔のビデオを見ているうちに当時の彼氏の言葉を思い出し、ちょっとだけムカつくというささやかな歌だったが、歌が始まりせセリフが入ったとたん、会場じゅうの気持ち、特に女子の気持ちが一瞬にしてステージの上に吸引されたように感じた。さりげないけどスゴイ引力。ピアノもすごく巧い。
コミカルな歌があったかと思えば、ちょっとエロティックなラブソングもあったり、レンジの広い人。3曲ほど続けて引いた後にボソッと自己紹介したかと思えば、いきなり「うちって間違い電話多いんですよ・・・。」という話をし始めて、披露したのが「福島の兄」。「福島の兄だけど、電話くれる?」って、知らない人から留守電が入っていたという体験を曲にしたものだった。その後もまともな(?)ラブソングとコミカルなのをとりまぜて、最後に「ゴルゴ13のうた」
ゴルゴ13の強さと無敵さにあこがれる女の歌である。ゴルゴ13の強さを「CIA FBI KGB 束になってもかなわないくらい」と表現するのだが、2コーラスめではCIA FBI KGB・・・・JTB TBC DHC NTT YKK NHK」と来ちゃう。まいった。
ちょっとフツーじゃないけどフツーのような、不思議な魅力の柴草玲さんに私はすっかりはまってしまい、もっといろいろ聴きたくて、帰宅してからAmazonでCD買ってしまいました。うーん、めったにないことでございます。

小唄婦人

小唄婦人

<山田晃士>
ギター弾き語りとポエトリーリーディングと客いじり。
シャンソンとロックとフラメンコをごちゃまぜにしたような独特の世界観。けっこう似た曲が多いので、2,3曲歌が続くとちょっと曲じたいには飽きたりするのだけど、(スミマセン・・・。)でもこの人が声を出している様子を見ているのは飽きない。ほんとにいろんな声の出る人だし、いろんな声の出し方をする人。
しかし、やっぱり私にとって、この人の魅力はMCと客いじり。「そんなことゆうたかてしゃあないわー」のコールアンドレスポンス。この曲の中で「今ふたたびの○○」の「○○」のところにいろいろと時事ネタを入れて客に唱和させる。そこで「白い恋人」「ルナシー」「駅前留学」など言わされて、「リズム悪いな。」なんて指摘されて歌唱指導されて、くっだらなくて楽しい。単独ライブだと、それだけで20分くらいやってるそうだ。
さらに客席に向かって「誰かオレにビールをおごらないか。」とよびかける。「じゃあ、オレが」とおごるお客さん。その後、「あ、でも今の言い方はまずかったね。ビールをおごらないか、なんて非常に上からの言い方だった。人間としてよろしくなかった。」などと反省する山田さん。演劇じみた大仰はセリフまわしから、いきなり素の喋りになるギャップもおもしろし。「今更〜」とつっこむお客さん。今回はけっこう彼のリピータの方もいたようだ。
結局ラストまでに、客席におごらせてビール二杯呑んでた山田さん。最後のキメゼリフは「夢に見るぞッ!」でした。

最後はセッションということでピアフの「PADAM PADAM PADAM」を。
体調不良で伊藤くんは欠席だったのが残念。伊藤多賀之シャンソンという、めったにない組み合わせが見られたのに・・・。

ところで山田晃士さんは柴草玲さんをべた褒め&べた惚れだそーです。わかる気がした。なんか通じるものがあるもん。

柴草玲さんはこんな仕事もしている。NHKみんなのうたで放送された「ヒナのうた」
とっても可愛い歌だが、途中で数が減るのにはドッキリ。ちょっと毒入りですね。
こんな歌も歌うのに、不倫の逢瀬の翌日みたいな意味深長な描写をするのも巧い。
懐深いですね。