カラフルロスタイムショー VOL6

木村万理さんから「チケットが余分にあるからどう?」というお奨めをいただき、清水ミチコの名に惹かれて行ってみたこのライブ。ホストは寒空はだかさん。好きなゲストを二組呼んで、音楽とお笑いとが共存共栄する趣向の会でもう6回目。
今回のゲストは前述の清水ミチコあがた森魚というメジャーな方々。そのせいか、お客さんの数は大変なもの。私の整理番号は100番以上。たぶん200人以上は入ってただろう。当日券の人は立ち見です。
会場に入ったとたん、小さな丸椅子が敷き詰めたようにびっちり並んでいることに驚愕。この椅子のサイズではワタクシ、はづかしながら微妙にはみ出してしまうんですの・・・。終わりまでお尻が持つかしら・・・と不安がよぎる。
会場は地下で、コンクリート打ちっぱなし風。天井にはダクトとミラーボール。昔、ディスコだったのかな?と思わせるような、CLUB風のしつらえ。お客さんの年齢層はわりと若い。20代後半から30代前半が多く、40代以上は演芸主体の会に比べると少なめ。会場のムードは音楽ライブって感じだ。


OPアクトは女性ボーカル+男性パーカッションのユニット。昭和歌謡をちょっとアンビエントな感じにアレンジしたものを数曲。細野晴臣さんプロデュースのユニットだそうだ。好き嫌いはともかく、昔の名曲を惜しげもなくバッサリと今風の音にしてしまうあたりは、なかなか面白いと思う。聴く人の懐古趣味に頼らず、平成の新曲として評価させたいというような意気込みを感じた。


そしてホスト役の寒空はだかさんの登場。いつもよりたっぷり長めのステージ。
見覚えのあるネタも多かったが、客席の反応が若い!って感じだった。
この会場とこの客層、漫談というよりスタンダップコメディと呼ぶのがしっくりくる。
ゲストのあがた森魚さんにあやかって、サッチモのまねで「赤色エレジー」♪サッチモの幸は・・・・で爆笑。
先日下北沢で聞いた皇室漫才、ロシア民謡でガラスの10代、とにかくいろいろ。
特に私にとって一番インパクトだったのは新曲「バカの壁
一回聞いただけなのに憶えてしまった。心に残らず耳に残るという点では「東京タワーの唄」を越えたかも。


はだかさんの後は清水ミチコさんの登場。物まね+弾き語りのステージ。とにかくその巧みさ、丁寧さ、視点のマニアックさに驚く。いろいろなアーチストの曲の特長をその当人の物まねで歌う「松任谷由美作曲法」「井上陽水作曲法」「スピッツ作曲法」、物まねではないけれどブルボン、ギンビス東鳩のお菓子の違いとこだわりを歌う「100円菓子の唄」、CD収録を断られた美輪明宏の物まねで「愛の讃歌」、桃井かおり大竹しのぶ吉田日出子の声を使い分けての「プカプカ」など、もーなんか、非の打ち所ないよ〜。
それでいて本人にぜんぜん力が入ってなくて、好きなことを追求してるうちに出来ちゃいました、ってな感じで押し付けがましくない軽さがカッコイイ。物まねする対象だって、ウケそうだからというよりは自分で好きな人という人選。最後の曲は矢野顕子の真似で「丘を越えて」であった。
会場で販売されていた新譜。ここで今回の曲はけっこう聴けるようだ。

リップサービス

リップサービス


休憩を挟んであがた森魚。私としてはそれほど興味なし。しかし彼目当てのお客さんもかなり多かったようだ。
とはいえ、なぜかこの人のCDを一枚だけ持っている。「バンドネオンの豹」だ。

バンドネオンの豹

バンドネオンの豹

学生のとき買ってけっこう聴きこみ、一度中古CDショップに売ってしまったのに、就職してからなぜかまた買いなおしている。でも今はぜんぜん聴かなくなってて、今回ライブを見るまで持ってることさえ忘れてた。なんで買ったのかなあー、わからん。昔の自分って、ほとんど他人みたいにわかんない。
私の記憶の中のあがた森魚氏はこのCDの時期(1990年頃)で止まっている。黒のスラックスで、白シャツのボタンを一番上まで留めているというデヴィッド・バーンみたいなスタイルの人だったのだが、この日の彼のイデタチはほとんどスナフキン。ひげ面で帽子をかぶり、ボヘミアンチックなのであった。
ぜんぜん期待はしていなかったのだが、叙情的でドラマチック、ポエトリーリーディングにも似たあがたワールドに引き込まれ、気がつけば会がスタートして3時間近く経っていた。ぜんぜんお尻痛くならず。やっぱ、面白かったんだなあ。
この日はこのアルバムからの曲を中心に。ちなみに「タルホロジー」の「タルホ」は稲垣足穂とのこと。
タルホロジー

タルホロジー


最後は清水ミチコあがた森魚で、嬉しいことにアルバム「バンドネオンの豹」から「パールデコレーションの庭」、全員で「Be My Baby」で締め。念を入れて伝えようとするあまり、同じことを何度も繰り返してしまうあがたさんのぐだぐだのMCに的確に突っ込む清水ミチコさんが可笑しかった。


帰りはこのまえの四谷コタンに続いて、なぜかまた偶然遭遇してしまった「嗅ぎつけて集まってきた」お笑い好きの皆さんと一杯。入ったお店はウエイターが外国人のため、メニューは日本語なのにそこに書いてある番号で注文を伝えなくてはならず。
番号で頼んだ日本酒をちびちび嘗めつつ見れば、グラスが入った白木の升の焼印はハイヒールの絵。
なんかしみじみ六本木を感じた夜であった。