馬車道おきらくシアター Vol9 おきらくピープルの音楽会


写真は野村証券馬車道支店の看板。地域限定版らしい。なかなかじゃん。

仕事が早めに終わったので、いつもより余裕を持って関内に到着。
毎回ぎりぎりに駆けつけて、客席でおにぎりを食べたりしながら観賞し、終わったらそそくさ帰る・・・そんな関係の私と関内の町であったが、今回は開演時間まで1時間あったので、ちょっとぶらぶらと歩いてみた。
し、か、し!歩けども歩けども飲食店ばかり。Bar、居酒屋、ビアホール、喫茶店、パブ、スナック、その他もろもろ。
恐るべし関内。一見明るく開けたムードなのだが、実はなかなかの「場末感」を内包している街。
そんな関内で開催されている「おきらくシアター」もなんだかんだで9回目。
毎回こちらが心配になるくらいお客が少なくて、今回も席が3分の2はゆうに余っていたと思われる。
よく続いているなあと感心するとともに、めげずに続けていただきたいとセツに祈る私がいた。
だってこのライブ、際立って出演者がユニーク。都内ではあまり見かけないブッキング。
あんまり遠くのライブには出かけないめんどくさがりの私が、おきらくシアターにはついつい足を運んでしまう。なかなかに、アヤシイ魅力をたたえたイベントなのでありますよ。

今回は「おきらくピープルの音楽会 とびっきりのB級ライブ」と銘打ち、キワモノ極まりない出演陣。
おなじみ山田晃士さんの「テアトル蟻地獄」で幕開け。(この曲が「おなじみ」ってだけでも、この会、かなりヘン。)
ここのステージはバックにビロードのカーテンがひかれているのだけど、そこに次々にキッチュでビザールな人たちが入れ替わり立ち代り出てくるので、なんかまるでデビッド・リンチの映画の中にいるみたい。お客の少なさが更に妖しさに拍車をかけていた。ライトな場末感、うらぶれ感。確かにB級の空気感。
しかし、山田さんはステージに出てくるなり言ったのだった。
「今回の出演者一同、楽屋で話し合った結果によれば・・・誰一人自分のことをB級と思っている者はいません!」だって。
あははははは。

寒空はだか
いつもどおりのスタイルでおなじみの感じだったが、ちょっと髪の毛が伸びた?毛の量とメガネのバランスが何かに似ている・・・と思って考えてみたら、「ひょっこりひょうたん島」の博士に似ているのだった。「客を引かせてナンボ」的な勢いで突っ走る高座であったが、はだかさんのファンらしきお客様がちらほらいてコネタにものすっごくウケたりするので、逆にびっくりしていたのが面白かった。ウケるとビックリする芸人て・・・。


好田タクト
世界の指揮者の物まね。ネタがネタだけに、クラシック畑からのお仕事も多いらしい。私は元の指揮者を知らないので「ああ、こーゆう人がいるんだな。」と想像で笑うしかないのだが、デフォルメがものすごいのでけっこう楽しめた。この芸風で関西弁なのには意表を突かれた。こういう「ミクロな物まね」って、東京っぽい感じがするから・・・。クラシックで、それも指揮者ものまねなんて、ともするとペダンティックで鼻持ちなら無い感じになる恐れのあるネタ。それが関西弁のおかげで中和され、イヤミの無い印象になっていた。高名な指揮者の物まねなのに、「ウチの近所にこんなおもろいおっちゃんがおるんですわ〜」という話を聞いているような軽さ。

ペーソス
ひさびさに専属司会のスマイリー伊原さん付きで見られて嬉しい。新曲ばっかりだったのでいまいちノレなかったけど、Voの島本さんの手の動きがなんともいえないんだよねえ。なんか、微妙にいやらしー。この人の本業が実は「風俗ライター」なのだということを最近知ったせいかもしれないが。ま、大人の動きですよ、うん。「もつ焼き小唄」「ワーキングプア」「さびしい男の子守唄」「行ってこい音頭」(だったかな、曲名うろおぼえ)「ワーキングプア」、心に染みましたねえ。「おしゃれな言葉・・・私、ひとりじゃないんでしょう」なんて歌詞が、何気に胸に突き刺さる。悲惨な状況でも、何か名前がついてしまうと安心してしまうのよね。ネットカフェ難民、明日はわが身・・・な私にしてみれば、心だけでなく身にも染みました。がんばって働こ!


山田晃士
相変わらずの変幻自在の歌唱力、ケレン味あふれる豪腕ギター。独特の世界。フラメンコともシャンソンとも付かないアダルトで激しい曲をわりとまともに3曲歌い上げたので、今回はお笑いは無しか?と思っていたら最後の曲がすごかった。プログレッシブ&パンク&フラメンコ&シャンソン?いきなり客に歌わせる、客に腕を振らせる、「楽しいですかー?」と呼びかけ、返事をさせる。脅迫的客いじりが健在で嬉しく。近所のリサイクルショップ「岩田屋」の話も面白かった。ゴミを売ってるようにしか見えないリサイクルショップって、どこの町にもあるんだねえ。
おきらくシアターに出始めた頃はなんとなく「なんでオレがここに?」的な空気が無いではなかったが、今回はもう、このシチュエーションで歌うことを純粋に面白がっていて、音楽ライブには無いアウェイ感を楽しんでいる節が感じられた。
最近、音楽仲間には「晃士、寄席にでるようになったのか?」といわれるそうだ。


さて、冗談抜きでお客が少ないおきらくシアターだが、意外にお客さんが協力的なのには驚く。芸人が伸びをしろといえば伸びをするし、腕を振れといえば腕を振るし、唄えといえば唄うのだ。それは毎回変わらない。
楽しみ上手なのかなあ。そのせいか、客席ガラガラでも不思議に居心地いいライブなのだ。
でももうちょっと人入ってほしいなー・・・。面白い企画多いのに。

山田晃士を見ていて思い出すのが、このヒト。音楽性はまったう違うので、山田ファンの方には異論もありましょうが・・・・傲慢なまでに自分の美学を貫き通す姿勢とB級感に近しいものを感じる。その美学がぜんぜんオシャレじゃなくても、一歩間違うとギャグでも、「文句あるか?!」ってな強さはリスペクトもん。
この手のヒトはジャンクフードみたいて、毎日だとくどいけどときどきすっごく欲しくなるのです。