柳家紫文と東京ガールズライブ「この遊美と〜まれ」

きれいな女の人が華やかな格好をして和楽器を演奏してくれる・・・ということだけで、なんか嬉しくなっちゃうDNAというのが日本人にはある。
東京ガールズってバンドは、そこんとこだけで攻めても十分やっていける。
だから別に自分たちがそこで満足すれば、このまんま変わらなくても「余興バンド」的に生きる道はあるわけだが、本人たちとしてはどこまでやっていきたいんだろう?っていうのが、前回の巣鴨ライブ直後の私の率直な疑問であった。
しかし今回それは氷解した。
この人たちは「芸人」になるのだ。
芸人になるとはどーゆうことでしょう?それは「スペアのきかない人」になるってこと。代わりのいない人になるってこと。それが「余興バンド」とは違うところ。
ひとつ大きく殻を破りつつあるな・・・という印象が残ったのが今回のライブであった。


会場はギャラリーとのことで、壁には額が飾られ、棚には作家ものの陶器などがいっぱい。ちょっと画廊風でもある。楽器の音は大変きれいに響くが、人の声だけ吸収してしまう不思議な性質の小屋で、せっかくのオチのところがよく聞こえなかったりして、残念な部分も。
前半はわりとおとなしい感じではじまり、この時点ではなんとなく硬さが目立った。
で、も、ですね、後半!後半がよかったのです。
小糸さんがこのバンドのキャラのキモだと思うんだけど、なんというか愛を込めて関西風に「アホ」と呼びたい。その魅力が炸裂していた。こういうフワフワしたキャラって、関西にはいるけど案外東京にはいない。なまじ毒やトゲがないので、くだらないネタの繰り返しにも耐える。女芸人特有の「イタイ感じ」が皆無。貴重ですよ〜、これは。
今回マイクの位置の関係でフロントマンが小糸さん、小梅さんの二人になってしまったということだったが、ボケとツッコミの役割分担がわかりやすくてよかった。3人って組み立てが難しいんだよね。「三段落ち」にしても「両ボケ」「両ツッコミ」にしても。
このまま固定にしなくてもいいが、交代で2名づつフロントに立つようにした方が、お客はわかりやすいかもしれない。
演奏もドライブ感あふれる仕上がり。邦楽演奏としては細かいところを言えばいろいろあるんだろうけど、その場の空気をがっちりつかんで離さない瞬間が何度もあったのだから、ライブ演奏としては大成功ではないかな。もー、興奮して鳥肌立ってしまった私。
終わってからも拍手がなかなか鳴り止まず。お客さんって正直だ。
だってほんとによかったんだもの。
「邦楽バラエティ」と冠するにふさわしいステージだったと思う。
なんか彼女たちの「かたち」が見えてきた感じがした。


紫文師匠は前半と後半の間にちょっと出て、都々逸、平蔵、および「両国」など。
体調不良とのことでやや控えめ。「東京ガールズ」名義の会だったから、弟子を立てるって意味もあったのかな?
相方をつとめた小梅さんの太鼓が心地よかった。
いつもけっこう太鼓が入るとビックリしちゃうことが多かったのだけど、今回はいい感じでスッと入ってピタッとはまる感じで、生理的に気持ちよかったのよね。音の大きさといいテンポといい・・・。


私はそもそも師匠のファンであるので東京ガールズはオマケというか、居酒屋でいえば「お通し」みたいに思っていたのだけど、そろそろ単品としてきちんと観ていこうか、と思わされたライブであった。(その分、辛口な批評もするぞーってことでもあるケド。)
今後師匠と一緒にやるのであれば、東京ガールズは邦楽を「何も知らなくても楽しいじゃん!」と思わせ、師匠は「ちょっと勉強すればもっと楽しいかも・・・」って思わせる・・・というよーなバランスで役割分担ができていれば理想だなー(あくまで私の主観、ね。)
シニカルなネタやブラックなネタなどの毒のあるものは師匠に任せ、ガールズはなーんかハッピ〜な感じで通してほしい。
っていうことと、もうひとつ。
ステージ上で師匠から小言を食う場面がけっこうあるのだが、これ、あんまりリアルだとお客も気を使う。笑えるような演出にしてもらえればなあ、と。リアルな小言は楽屋でしてもらうことにして。もしくは、多少手厳しいことを言われたとしても、後の出番でガールズ側が反撃できるような演出がないと、ちょっと後味悪いっす・・・。
今回でいえば、「虫売り」のネタのときに小梅さんが虫笛(鈴虫の音)を吹いたのを、「ほんとうはカブトムシでやろうと思っていたのに。」と咎めたところなんかが、小言っぽいけどネタっぽくてよかった。あーゆう感じで笑いで終われば救われるのですが。


さて、このライブは「ワイン、おつまみ付」という触れ込みであった。
が、なんと、それはライブの後、最後に打ち上げとして、ということであったのだ。
や、やられたー。飲みながら観たかったなあ。
当時、仕事が忙しくてすさんでおり、会う人ごとに激しく「プライベートが無いっ!」と毒づいていた私は、その日もまた会場で会った人に誰彼かまわず愚痴っていた。そこに居合わせた小梅さん、一言。
「私たちもプライベートなんかないですよー。毎日、合宿みたい。」
あー、そうか、そうだよねー。
まあ、プライベートと仕事の境界がはっきりしてるのが勤め人のいいところ。
芸で生きるという選択は、女性の生き方としては禁断のドアを開けることなのかもなあーなんて思ったりした。
破っても破っても立ちはだかる壁との戦いの人生ではありませんかぁ。
でも自分がOKを出してしまえはそこがゴールになっちゃうのだよね。
こないだの神田阿久鯉さんといい、女の芸人さんの生き方とか人生観って興味ある。
基本的に真面目じゃないと勤まらないよなあ。


なんかPVでオチをつけようと思ったのだが、いいのが思いつかず。
3人組のガールズバンドで、明るくてカラッとしてて、衣装がキュートで、演奏カッコよくて・・・とか考えて、思い至ったのがゴーバンズ
ぜんぜん脈絡ありません。私の趣味です。
ま、ガールつながりってことで「ざまぁカンカン娘(ガール)」など。