第333回 花形演芸会

豪華出演陣のため、激烈なチケット争奪戦だったそうである。
電話がつながらなかった!つながったけど売り切れだった!立見席に並ぶ!
といった声を多々耳にする中、私はたまたま柳家紫文さん掲示板での「チケット分けます」告知を見てお願いしていたため、とんでもなくいい席でみることができちゃいました。恐るべし、芸人枠。ありがたいやら恐縮するやら。
しっかし、立ち見も含めてたいへんなお客さんの数。休憩時間にトイレに行ったら大行列で、始まるまでに席に戻れるかどうかも危ぶまれた。


鏡正二郎  曲芸
三遊亭遊雀 初天神
爆笑問題  漫才
三遊亭円馬 試し酒


豆まき&仲入り


林家二楽  紙切り
柳家紫文  俗曲
柳家喬太郎 ハワイの雪


先週のことなので記憶も薄れつつあるが、印象に残ったものだけ感想書こう。


<三遊亭遊雀初天神」>
この人の金坊はすごい。子供の可愛いところと憎らしいところ、素直なところと邪悪なところがぐるぐるとどす黒く渦巻いている。子供の泣きじゃくり方がリアル。だけど、不思議と悪意は感じなかった。話を始めるときに「子供の立場から演らせていただきます。」って言ってたせいかな。妙にテンション低い父親もまたリアル。
凧揚げまで行くかな?と思っていたら、団子を買ってやったところでおしまい。残念。もうちょっとこの親子の攻防を見物したかったのだが。


爆笑問題「漫才」>
テレビで見るのと変わらないスピード感。毒の濃さもテレビ的だったという気もしたけれど、それでも「現代」を切り取る角度や切れ味は、他の追随を許さない。「流行語」ってちょっと口にするだけでもウケるからそれで安心しちゃう人も多い中、これでもかこれでもか、というしつこさで笑いに昇華していく姿勢に脱帽。
それと今回生で見て思ったのだが、田中さんのフツーさ加減ってむしろすごいのでは・・・。
二人が売れなかった時期、部屋にこもってゲームばかりしている太田さんに対し、田中さんはコンビニでバイト。太田さんの奥さんが「この人、このまま店長になるつもりかしら?」と思ったくらい生き生きと楽しげに働いていたという。生活者としての自分と芸人の自分が矛盾しない超絶ナチュラルの人。だから太田光と一緒にやっていられるのだろうなあ。


柳家紫文「鶴八鶴次郎」>
このネタ、私は何度か見ていて、当然オチも知っている。なので、どう楽しむかってのが懸案でもある。(ネタとして面白い、面白くないという話とはまた別の話。)
でもまあ、感動して聴いていた初めての客が最後に拍子抜けする様子を見るのは、高座との共犯関係みたいでちょっとイイ。この「共犯感覚」がこの人のひとつの味かもしれん。
いつもは弟子の小寿々さんが上調子をやるのだが、今回は鶴賀伊勢次郎さん(新内のプロの人)。すぐ目の前で弾いているのに、風に乗って遠くから聞こえてくるような三味線。先日機会があって常磐津の演奏家の方のミニライブを観ていたため、そこで観た「押しの強い三味線」と比較できて個人的には面白かった。そんな興味を持てればまた違った楽しみもあるかな、と。


林家二楽紙切り」>
こんなに近くで見たのは初めて。ほんとに白い紙なのねえ。線が引いてあるわけではないんだ、とまずは失礼な感心。
リクエストに答えて「ペコちゃん」「桜島」など。「桜島」には悩んでいた様子だったが、見事に桜島大根と噴煙を上げる桜島の姿を切り上げた。テンション高い紙切り。体育会系風味。
後半は音楽に乗せて、切り絵の影絵ストーリー。女の子が成長してお嫁に行くまでのエピソードを見せるものだったが、うーん、別に泣かせようとしなくても。同じ手法でもいいから、笑わせてほしいなあ。あくまで私の好みなんですけど・・・・寄席に「いい話」とかあんまり求めていないのよね・・・。


柳家喬太郎「ハワイの雪」>
初恋の女性がハワイで死の床につき、自分の名前を呼んでいるという手紙が届き、渡航費用を手に入れるため、腕相撲大会に出場するおじいさんとその孫の悲喜こもごも。そんなストーリーの新作落語。前半のスラップスティックな勢いに反して、後半はしっとり。話の終わり方もサゲというより、「幕切れ」と表現したい。一人芝居みたいな感じ。
けど、全体にちょっとあざとく感じてしまって、私はあんまり好きになれなかった。(ファンの方、個人の好みの話だと思って怒らないで下さい。私はバカが好きなんだ!)
しかし、街行く人々を活写する人間描写力には凄いものがある。酔っ払い、学生コンパ連中の物まね、すごい観察眼とシニカルな目線。徹頭徹尾その意地悪さが生きた噺を聴いてみたい。


この日は節分だったので、休憩時間前に豆まきがあった。私は爆笑問題のどちら
かが投げた豆の袋が頭にヒット。痛かった・・・。なんかご利益あるかねえ。