馬車道おきらくシアター Vol4

関内ホールにて行わていれる「馬車道おきらくシアター」。
馬車道から新しい波を』を合言葉に、かつて横浜にあった劇場『喜楽座』の精神を受け継ぎ、21世紀の新しいボードビルを展開しよう!という趣旨のもと、2006年11月より月イチで開催されている。
お笑い中心だが、音楽色の強い出演者も目立つ。
けっこうオリジナリティのある面白い会だと思うんだけど、いかんせんまだまだ集客がさびしい・・・。
この日もやっと半分席が埋まっているくらいだった。もったいない!

いつもはオオタスセリさんがレギュラーで司会もやっているのだが、今回地方ツアー中で留守。だからというわけでもないだろうが、第一回の出演以来なぜかごぶさただった山田晃士さんが出演と司会を勤めた。
自称「ポップでキッチュなガレージシャンソン歌手」。アコーディオニスト佐藤芳明さんとのユニット「ガレージシャンソンショー」で歌を歌っていた方、といえば分かる人にはわかるであろう。

ガレージシャンソンショー

ガレージシャンソンショー

180センチを超える長身に黒づくめの衣装、シルクハット、背中まである長髪。昭和40年代の少女マンガに出てくる悪魔みたいな山田晃士さんに加え、その他出演者も厚化粧ばかり。サブタイトルが「ちょこっと早いバレンタイン」なんて言いつつも、実はちょっとした化け物屋敷!すごかったなあ。


<アコる・デ・ノンノン>
ピンクの総スパンコールのドレスに白のウィッグ。団扇のような付けまつげ、ラメラメの唇、ショッキングピンクのロンドンブーツで、突如客席から現れたアコーディオン女。客席、固まる。
少女時代からゲイカルチャーに興味があり、ドラッグクイーンを意識したコスチュームとのこと。その格好で、誰もが知っているポピュラー音楽をケレン味たっぷり、いなたさ全開で演奏。客席を歩き回りながら狙いをつけたお客をじっと見つめ、にじり寄りながら奏でる「愛の賛歌」、タップを踏みながらの「エンターティナー」、タンゴを踊りながらの「キッス・オブ・ファイヤー」など、何か「プラス一芸」あり。10kgはあるアコーディオンを胸に抱え、びっくりするほど動き、踊る。
また、着替えのときの幕を持たせたり舞台袖にタップシューズを取りに行かせたりと、お客さんの巻き込み方も上手い。
見た目は毒々しいが、テーマパークのぬいぐるみみたいな親しみやすさがある。そうえいば、出し物全体もアトラクション的かも。
普段はヘブンアーチストとして上野公園などで大道芸をする傍ら、年に1、2ヶ月は南仏に渡り、ジプシーの人々とテント生活をしながら純粋にアコーディオンへの投げ銭だけで暮らすというのを何年も続けているという、なかなか根性の座った女性である
素顔で活動するときは「あんざいのりえ」、今回のように厚化粧のときは「アコる・デ・ノンノン」と名乗っているそうだ。


トーク
山田晃士さんとアコる・デ・ノンノンさんの二人による、バレンタインをテーマとしたトークを20分程度。
「チョコの代わりにコンビニおにぎりをあげたら、ホワイトデーにサンドイッチを返された話」
「高級チョコにパティシェの親父の笑顔写真が入っているのはいかがなものかという話」
「BerrowLoversNight(coba主催のアコーディオンイベント)の楽屋のアカデミックな雰囲気についていけず、二人とも無言でメイクだけがどんどん濃くなっていった話」「○ba氏と電話で4時間ケンカした話」などなど。
2年前のBerrowLoversNightでの共演者同士ということ、フランス滞在経験があることなどの共通点が多いためか、トークもよく弾み楽しかった。


<だるま食堂>
この「おきらくシアター」は、出演者と出演者の間に暗転するのが特徴なのだが、ステージが明るくなったときにこの3名がステージにいるというインパクトはすごい。黒いドレスに詰め込める限界まで詰め込んだ胸とオシリ。モータウンの女性歌手のような極彩色のウィッグ、。見たことない人には、「ものすごい悪意を持ってデフォルメしたシュープリームス」って言えば伝わる?
おなじみ「ボインボインショー」だが、今回はミュージシャンとして呼ばれた、ということで、ちょっと歌や音ネタが多め。
ばかばかしいネタに美しいハモリ。はまるべきタイミングにピタッとはまるギャグ。いちいち決まりすぎて、お腹は痛いし涙は出るしで大変。


<山田晃士>
ギター一本での弾き語り。といってもフォークっぽさは皆無。漂うヨーロッパ風デカダンスセルマーのギターを抱えて豊かな声量を自由自在に操り、耽美的に背徳的に、ときには情熱的に歌い上げる愛の歌。セリフと歌が渾然一体となっているスタイルなので、ほとんど一人ミュージカル。基本的には本人が自称するとおり「歌うたい」そのもの。なんで芸人扱いされてここに出ているのか・・・それはたぶん彼のMCのせいじゃないかと。
例えば即興で歌った「おきらくシアター」ソングのとき。(原曲は「テアトル蟻地獄」という曲らしい。)
★ サビで急に声を落として客席を見渡し「(歌声の)自然発生を待っています。」としばし口パクだけで歌う。
 ★なかなか客が歌わないので「じっとしているから恥ずかしいのです。左右に揺れながら歌ってみよう。」と強制して自分も揺れる。
 ★「関内ホール〜♪かっこしょう〜♪((小)の意味。小ホールってことです。)」と会場名を歌いこみ、「かっこしょう」の「かっ」の部分で「スタッカートが足りない!」と客席を叱責し、歌唱指導。

など。
これらは一例であるが、その演劇的かつエラソーな様と絶妙な間。はまるとたまらないのだ。
また、「大失恋をして傷心のあまり、一人旅に行って温泉街のストリップ小屋に入った。いつになっても始まらないので受付の親父に言ったら『5人集まったらはじめる』というので、5人分の料金を払って始めてもらった。踊り子さんと1対1でストリップを見た。一人きりの私をストリッパーが抱きしめて慰めてくれた。涙が止まらなかった。」という話をギターに載せてしんみりと語ったかと思いきや、「・・・というのは今、私がでっちあげた作り話です。」とさらっと落とすのもなかなか巧み。
お笑いの人ではないのでこういう部分ばかり観て書くのもいかがなものかとは思うのだけど、やっぱりMCを楽しみに観に行ってしまう自分を抑えられません。ごめんなさい、山田さん。


びらん

びらん