TAKAYUKI ITO LIVE こってり祭り2006

小学校の頃、クラスに一人くらいすっごく面白い男の子っていなかっただろうか?学校や先生のこと、授業で習ったことを替え歌やオリジナルの歌にして、休み時間などに目立ちまくる。学級のエンターティナー。クラス単位の人気者。ルックスも悪くなくて、学級委員選挙では必ず上位に選ばれちゃう。バレンタインにはいっぱいチョコもらっちゃう。伊藤多賀之にはそんな雰囲気がある。クラスの人気者がそのまんま成長しちゃった感じなのだ。


昨年の8月に文化放送で行った無料ライブを見て以来、また機会があったらとうかがっていたのだが、昨年の末にあったライブに行けず・・・。伊藤クン、体が弱いらしく(国に難病指定をされている病気を患っているらしく、公式ページでも入院したととたびたび書いている。)ライブって一年から一年半に一回くらいしかやってくれないので、ホントに惜しいことをしてしまった。そんなわけで、悔し紛れに買ったのがこのDVD。「伊藤多賀之 こってり祭り2006」。
2006年の3月頃に行われたライブを記録したDVDらしい。まあ、最近の姿だからこれでガマンしよう・・・。

こってり祭り2006~初BANDワンマンLIVE!~ [DVD]

こってり祭り2006~初BANDワンマンLIVE!~ [DVD]

以前「ブリーフ&トランクス」という、それもどうかと思う名前のユニットをやっていたときは基本的にギターデュオだったが、このライブは全編バンド編成である。「半径5mの日常を唄う」がキャッチコピーの伊藤多賀之の奇妙な歌詞に、分厚いバンドサウンドが絡んでいるのが面白い。バンドの皆さんも「この歌詞のここんとこはこうしたい!」「ここはオレがハモりたい。」などと積極的に楽しんで参加してくれいているとのこと。
また、別キャラクターを演じたものをプロジェクターで投影しながら一人二役で掛け合いを演じたり、そのキャラ(コインロッカーさんというロックをカリカチュアしたよーなキャラ)に変身して後で登場したり、なかなか演出も凝っているし本人も芸達者。


この人の唄の特徴はなんといっても歌詞。下ネタが多く、けっこうお下品。しかしその下ネタに大人の匂いがしないのである。
子供がわざと汚い言葉を言って面白がってるみたいなのだ。伊藤クンも昨年30歳になったということで決して子供ではないのだが、どんなことを言ってもなぜかいやらしくならず、むしろさわやかにさえ聞こえるから不思議。
例えば「まんげつ」という曲、こんな歌詞である。


「満月の夜に 万華鏡のぞけば、一万個の宝石が 百万個に輝いてみえる」


字面で見ればなんてことないが、彼はこの歌詞をヘンなところで伸ばして歌うのでエロ唄になる。(どこで伸ばすかは考えてみてください。)でも歌声が透明感のある高音で女性的なせいか、ぜんぜんやらしくないんだよね。それから、唄い方をわざと巻き舌にしたり、「ユニットバス」を「ユニットブヮース」、「足の裏」を「あしのうるゎー」と唄ってみたり、語感を面白がっている。子供が同じ言葉を面白がって何度も繰り返したり、真面目な唄の中にエッチな意味に取れる歌詞を見つけてそこだけ大声で歌ったりするのを思い出させる。
お下品な言葉やマニアックな言葉を使うことをバンドのメンバーも楽しんでいて、わざと美しくハモったり音を分厚くしたり美しくしたり、なかなかシャレのわかる青年達である。「サナダ虫」「ミジンコ」「柔突起」「赤血球」などという単語を隙のない演奏で飾ってくれる。いいなあ、テクニックの無駄遣い。ミュージシャンはこーゆう余裕を持ってるのがカッコいいよね。


まあ、下ネタばっかりじゃなくて日常生活をへんなところで切り取った唄も秀逸。焼肉を食べに行き、ホルモンをなかなか飲み下せずにずーっとかみ続けている彼女の様子を歌った「ホルモンを飲む瞬間」、冷蔵庫の固まりかけのプリンに指の跡をつけた容疑者として家族会議にかけられる様子を歌った「取り調べ室」、医療過誤をカジュアルに歌う「病院」、ブルドッグ顔の体格のいい小学2年生の女の子に関する伝説を歌った「デレデン」などなど。奇妙な歌詞がちゃんとメロディ、リズムに乗っかっているのにはほんとに感心する。
まあ、もしかしたら歌詞の内容だけ考えたら、所ジョージの歌なんかと通じるものがあるかもしれないが、それを伊藤多賀之の独特の世界たらしめているのは彼の声とキャラクターでしょう。他の人が歌ったのではダメなのだ。
個人的には「ミジンコフェチ」が一番好き。ミジンコを飼いたい子供の唄なのだが、


「あんなに小さくて それでも動いてる それがかわいくて 神秘的だとわかってほしい」


というところで、ちょっと涙ぐみそうになってしまった。ミジンコに限らずハムスターでも蟻んこでも、小さな生き物がせわしなく動いている姿を見ていると我知らず胸が熱くなることがあるが、あの感覚がふと蘇ってきたのである。あの切ないような愛しいような感じは何なのかねぇ。この人のこういう「小学生マインド」にときどき心底ヤラれます。


いやー、面白いなあ。
そんなわけでここんとこ、帰宅すると毎日観ちゃってますよ。
ライブ行きたいなあ。


ってなところでブリトラ時代の動画発見!
小ヒットした名曲「ペチャパイ」のPV。主に右側でギターを弾いているのが伊藤クンです。
今から10年近く前の映像なので今はもっとあかぬけた感じになっているけど、歌声とスピリットは変わらず。この声あってこその伊藤多賀之なのだ。
しかしPVに、最近離婚で話題のだいたひかるが出ているのにびっくり。曲とあんまりイメージ合わないぞ・・・。