お気に召しますで笑歌 Vol3

オオタスセリさんとあべあきらさんが新曲五曲を必ず、無理やりでもいいから披露+ゲスト2組(ゲストは新曲5曲という縛りは特にないらしい。)という構成の実験的なライブである。この会も3回目を迎えた。正直、個人的には今一番見逃せないと思っている会である。なんでかなあ。思うにやっぱり新鮮なのではあるまいか?だから演ってる方も観てる方も楽しいのでしょう。


イントロダクション

オオタスセリさんとあべあきらさんが2人で出てきて軽くトーク。この会の趣旨など。そこでスセリさんが挨拶代わりに「ストーカーとよばないで」「負け犬の歌」「女達の恋歌」などを披露。


笹本圭吾

私は初めて見る人だが、コタンの常連出演者らしい。気の毒なくらい緊張しているのが見て取れてこちらまではらはらしてしまったが、カミカミになりながらトツトツと語ったメイド喫茶に関してのMCが、妙に印象に残ってしまった。そのときの私の気持ちの変化は「へー、メイド喫茶好きなんだ。」>「ふーん、メイド喫茶、けっこう行く人なんだ。」>「うわー、メイド喫茶、かなり行く人なんだ。」>「げげっ、メイド喫茶マニアなんだ。」>「ちょっとヤバイんじゃない?」って感じ。狙って練られた話術じゃないだけに、先がまったく読めないのがよかったのでしょう。出し物はギター弾き語りの正統派コミックフォークっ・・・て感じかな。


東京ガールズ

登場した瞬間、客席が一瞬固まった。ここまでの出演者の衣装は普段着などラフで地味。そこに赤や紫の市松の着物のお姉さんが3人、三味線と鼓と扇子持ってにぎやかに出てきて御覧なさい。そりゃびっくりである。この人達は果たして「きれいどころ」なのだろうか?「おもしろ」なのだろうか?という迷う客席。しかしネタが進むつれ、その両方なのだということが伝わってきた。ヴォーカルの小糸さんの堂に入った高座ぶりが印象的だった。今思い出すとけっこう強引?って思う瞬間もあるのだが、そのときはぜんぜん感じなかったのよねえ。なんかフワーッとしてるからなあ。でもなかなか強いぞ。「コンニャクトーチカ」だ。もーちょっとそれぞれに自分の顔が出来てきて、さらに「この人たちならでは!」なネタが増えれば、姉キンと対決できるんでないか?
えてして和物をカジュアル化すると「ヤンキーっぽい」もしくは「お水っぽい」かどっちかになりがちなのだけど、そのどっちにも陥らないお嬢っぽい明るさは大切にして欲しい。ハスッパじゃないとこが魅力なのだ。


オオタスセリ

なんとメイド服で登場。大きなメイドさんである。「私のイロハ」のアンサーソングのような50音の歌や、暗い歌を歌う女・・・など。トークも冴えて快調に飛ばしてくれる。「暗い歌を唄う女」(ナンシーと言うキャラだそうな。)の中に、空腹のあまりカラスの食べているパンを奪い「私はカラス以下」と嘆くくだりがあるのだが、そこで私の友達がノックアウト。涙流して苦しんでいた。「私が見た痛い女」も面白かった。こういうのって、歌っている本人も痛い女に見えてしまうのだけど、ぎりぎりのバランスでOK。難しいとこだよなあ。でもじつは私、こういうの好き。聞いてて胸がすくようでスッキリ。こういうのを聞いて、よもや「自分のことかも?」なんて思いやしないのが女ってもの。(同じ理由でミラクルタイプの松下由樹が演じる痛い女の数々も大好き。)しかし、もしかしたら男性は別意見だろうか?
あと、だんだんギターと一人コントが合体してきた感じ、というのが今回の全体的な印象。


あべあきら

「ばか神輿」から始まり、今回はわりとリリカルな曲を披露。「ペガサスの空」が印象に残った。そりゃあ、馬だもの、馬糞もしますわねぇ。あべあきらさんの歌は情景が目に浮かぶ。それも不条理マンガの絵柄で。それこそ「ぼのぼの」以前のいがらしみきおの絵とか、谷岡ヤスジの絵柄とか、相原コージの絵柄とかで光景が浮かぶのである。彼の歌を初めて聴いたときはなんなくお下品な感じが好きになれなかったけど、今回はお下品の向こう側の叙情を見た気がします。しかし、笑いっていう点では前回の方が強かったナ。今回の歌はどっちかというと男性に支持されそう。
ラストの「スットコ侍」は架空の時代劇のテーマソングってことで、テンポのいい明るい曲。客席との熱いコール&レスポンス。いやあ、これがこの会の醍醐味かなあ。パーティ気分。


表現活動で飯を食う人というのは、まずクオリティを考えるとなかなか新しいものを人前にさらすのは難しい。でもたまにはこういう風に割り切って「自分の才能」で遊んでほしい。自分を叩いたりひねったり絞ったりして、「おお、こんなものが出てきた!」って自分で面白がってほしいな。
その過程に痛みは伴うかもしれないが、そこが原点のはずだもの。