木村万里シャッフル 笑いの人間交差点

木村万里さんプロデュースによる闇鍋のような企画ライブの第3回。
仕事がちょっと伸び、さらに12月にしては記録的な悪天候で電車が遅れ開演時間に間に合わず。最初の出演者の前の暗転タイム直前にやっと席に滑り込んだ。靴の中がぬれていて気持ち悪いままの鑑賞。さらに悪いことに前の席の人が大きな人で、座高が高くて舞台が見えない。終始なんとかうまく舞台が見えるように姿勢を変えながらの鑑賞であったので、個人的にはとても疲れたライブであった。

今回は「笑い」というより音楽好きの木村万里さんという性格が強く出た感じで、前回や前々回と同様に爆笑につぐ爆笑を求めて行った人(<私とか。)には「アレッ?」という肩透かし感があったかも。でも、チラシにもちゃんと書いてあったもんね、「東京のゆる〜い空の下、遊び心」って。看板に偽りなしだったってコトで・・・。そのうたい文句どおり、のんびりほのぼのした会だった。「きばらんと まあぼちぼちに いきまひょか」という、田辺聖子さんの川柳を思い出す。

また、今回は出演者のセレクトが謎。今まではあまりテレビやラジオに出ないけどおもしろい芸人さんを知ってもらえる場を!という趣旨があったと思うんだけど、今回なぎら健壱さんにしても栗コーダカルテットにしてもある程度評価が確立していて、集客も見込める人達だったから・・・。しかしそーいう人たちも他の出演者と並列に扱ってしまうところが、この会もカッコいいところか。メジャーだからって特別な時間枠を作ったりしないのね。

柳家紫文

小寿々さんを従えての「鶴八鶴次郎」で幕開け。このメンツではトップバッターになってしまうのは仕方ないけど、このネタにこの出番はやっぱり不利だったような。特にこの日は大雨で、始まってすぐの客席は落ち着かずがさがさしていたので。でもやっぱり三味線の音色は強い。特にこの会の客層には特に強い。徐々に水を打ったようにしーんとなる客席。たぶんかなりの人が真面目に聞いていたでしょうし、オチを知っている人は心の中で含み笑いをしていたことでしょう。近くの席から「もっと年配の人を想像してたけど、意外と若い人なんだね。」との声。まだまだ初めて観る人がいるようだ。開拓の余地あり。新作「大岡越前」も、気長に磨いていってほしいものです。

山本光洋

私はパントマイムが嫌い(なんかスカした感じが気に食わない。)なので見る前はちょっとブルーになっていた。一つ目のネタも「ああ、いかにも・・・。」って思っていた。しかし!二つ目のネタ、マリオネットのチャーリー山本には大爆笑。あやつり人形に扮してカクカク動きながら、喋りまくる。そう、パントマイムだけど喋るのだ。私が嫌いなのは喋らないパントマイムなので、コレはOK。動きがまったくあやつり人形そのものなのだが、「すごいなあ、うまいなあ。」って思ったのは観終わったあとのこと。観ている間はとにかくおかしくておかしくて笑っていた。コレってすごいぞ。技術の水準の高さを意識させないって、すごいこと。見てる最中に「うまいなあ」なんて感心している余裕は無かった。ネタに特にオチはなく、とにかく動きとセリフのおかしさだけで見せる。頭で笑うのではなく、本能で笑わされてしまう。くすぐられたときって、問答無用に笑っちゃうでしょう?あの感じなの。

前田燐

昔うちの父が「親亀の背中に小亀をのせて〜♪」という唄をよく唄ってくれたのだが、その本家本元がこの人。音楽療法士の奥様のピアノでエノケンの唄を。うーん、私はよくわからない。「懐かしい=面白い」という図式にはならないので。大喜びしていたお客さんもいたが、ジェネレーションギャップってことにしておこう。しっかし、奥さん、30歳下だって・・・・。よく結婚を決心したなあ。だってどう考えてもダンナ、自分より早く死んじゃうんだぞ。さびしいじゃん・・・。

なぎら健壱

テレビやラジオでホラ話を披露している人、というのが私のイメージ。歌声を聴いたことがないではなかったが、ライブで聴いたのは初めて。その美声にまず驚く。鼻濁音が美しい。古い唄やちょっとした替え歌の間にトークを挟むという構成。楽器は違えど、これもある種の音曲演芸?しかし「昔のヒットソングを・・・。」とはいっても明治とか大正とかのもので、明治42年のヒット曲をやった後、当たり前のように「では次は明治43年のヒット曲を・・・。」とか言われても、知りませんって。そーいうミクロなハズシ方が巧いなあ。やっぱり手馴れてるって感じです。
<追記>
このときなぎらさんが演った中の1曲のメロディがどう聞いても「箱根八里」だったんだが、ああいう替え歌があるのかしら。「箱根八里」が替え歌にされるほどのポピュラーソングだった時代があったってことかしら?もっと他にもあったら知りたいー。

栗コーダカルテット

リコーダーを主体とした4人組。リコーダーとウクレレその他による間抜けなアレンジの「ダースベーダーのテーマ」はラジオでけっこう耳にしていた。重い曲を軽く、速い曲をゆっくり、楽しい曲を悲しく・・・など、その曲の本来の性格と真逆のスタイルで演奏する、というのはサン・サーンス「動物の謝肉祭」から続く冗談音楽の王道。この人達この会にはめずらしく純粋に器楽のみ。音楽系で笑わせるっていうと歌詞やセリフで笑わせるっていうのが多い中、音だけで笑わせてくれるのは新鮮でした。ダースベーダ以外はオリジナル曲やイギリス古謡など、スタジオジブリのアニメが似合いそうな牧歌的であったかい曲が続く。しかし会が終わって会場にBGMとして栗コーダのCDが流れた中に、なんとディープパープルの「ハイウェイスター」のカバーが!えーっ、これやって欲しかったなあ。あと、ELPの「聖地エルサレム」もレパートリーにあるらしいし・・・。まあ、この会の客層考えると、こういうロックな選曲は無理だよな・・・。

ふつうはライブの後はちょっと呑んで帰ったりするのだけれど、この日は本当に滝のような雨。さらにまだ翌日も仕事だったので早々に失礼した。横殴りの雨にふらふらしながら帰宅すると、なんと雨漏り。台所には水溜りができていた。
うっかりスリッパでそこに踏み込んでしまい、ハッと現実に帰った私なのでした。