西の白ぬり東の黒ぬり スリー・ビックリーズvs姉様キングス

一口にお笑い芸人とは言ってもいろんなキャラがいるものだ、と思う。
薀蓄で説得するタイプもいれば、じーっと狙っていいタイミングでおいしいところを持っていくタイプもいれば、とにかく壊れて壊れて、まっさきに壊れることで強引に空気をつかんでいくタイプもいる。今回はそんな強引な人ばかりが集まった、そんなライブであった。そんでまた、私はそういうタイプの笑いが好きだったりする。
チラシが手元にあるが、キャッチコピーがすごい。「黒ぬりvs白ぬり」「関東vs関西」「バカvsアホ」「ソウルvsシャンソン」。上方落語桂あやめ、林家染雀からなるクレイジーな音曲ユニット姉様キングスと、往年のシャネルズよろしく顔だけ黒く塗って、ギャグを織り交ぜながらソウル、ファンクの名曲、オリジナルを聴かせる、魅せるスリー・ビックリーズの共演なのである。姉様キングスは二度ほど見たことがあるが、スリー・ビックリーズは初めて。この組み合わせ、なんとなく私の嗅覚にヒットした。2日間で昼・夜・昼と3回の公演。その初回、昼公演に行ってきました。
入場料は5500円とちょっと高め。ドリンク・フードのチケットが2枚ついてくるので仕方ない。うむ、こういうところでとりあえず利益を確保するというわけなのか、なるほど。ま、それはそれで仕方ない。けど、2500円なら私はたぶん、もう一回観に行ったなあ。それくらい、面白かったからね。

まず仕掛け人の島敏光氏、吉川潮氏が直々に前説。二組の芸人をおおざっぱに紹介。この前説、意外と大切。たぶん会場には、どちらかのファンしかいなかったはずだから。この企画、とにかく「白ぬり」と「黒ぬり」を一緒の舞台に乗せてみたい、という単純な発想だったとのこと。きっと発想は単純な方がよいです。事故のような奇跡が起こりやすい。ふふふ。
最初は黒のお引きずりで姉様キングスの登場。ホテルからそのままの姿で会場まで来たという。場所は赤坂。途中で外人に写真を撮られたとのことで、「間違った赤坂芸者の姿を伝えてしもたわ。」というあやめさんの言葉。
都々逸、ストトン節、キン尽くしなどの中に、盛り込むはシモネタに皇室ネタ。皇室ネタのたびにおっとりと「気ィつけや〜。地元やねんで〜。いらんこといなや〜」と突っ込む染雀さんが可笑しい。いつも思うが、とにかくこのユニットを遊びとして心から楽しんでいる様子がとても気持ちいい。本業は別にある彼らだけど、根っこがしっかりしていれば、こういう枝葉はいくら揺れたってOKなのだ。揺れまくり。
姉キンが引っ込んだ後、登場した3人組。黒いスパンコールの短い衣装(ウォンテッドのときのピンクレディ風>にアフロやボブのウィッグでモータウン風。いきなりスパイスガールズの「Wannabe」で度肝。唄、巧いぞー。「モータウンメドレー」「マイケルジャクソンメドレー」など、音はカラオケだけど、歌い踊り、キメに昭和なギャグを盛り込んで、理屈ぬきに楽しい。選曲がもう、80'sキッズには泣けちゃいます。これはできれば、同年代の同性の友達と観に来て、踊りまくりたい。演芸風にわかりやすくいうと、だるま食堂に音楽的な要素をもっとプラスした感じです。

最後はふたたび姉様キングスによるシャンソンショー。アコーディオンおしどりマコちゃん。アコ弾きとしてはしっかりチェックしてしまったブランド名はゼロセッテ。たしかイタリアのメーカー。白パールで可愛いアコだった。内容は以前下北沢で見たものとほぼ同じだったが、やはり強烈。目にしみるわ・・・。中でもジャクリーヌお染の「人生は過ぎ行く」は可笑しいながらも悲壮感があって、いい。恋人に去られようとしている年増のオカマの悲哀とこっけいさがいいブレンドなのだ。ちょっとシャンソンっていいかも、とか思ってしまった。人生の哀歓が過剰に詰まっていて、過剰すぎて可笑しくて過剰すぎて切ない、という。楽器ひとつと歌だけ、というシンプルさもまたいい。
「エクスタシーいくよくるよ」「インジャモンdeコマンタレブー」などオリジナルで、すっかり姉キンワールド炸裂。ものすっごい甘いお菓子を食べたときと同じような頭痛がしてくるであります。

最後に東西白黒がステージに集結。「写真撮影大歓迎」との声に応えて皆携帯やカメラを構える。私も撮ってみたけど、暗い中ではピントが合わず失敗に終わりました。残念。

恋のモーレツラッパ吹き(音符記号)

恋のモーレツラッパ吹き(音符記号)