ひとりモンいいモン

タイトルどおり独身、一人芸を生業とする芸人さん(寒空はだかオオタスセリ柳家紫文)の3人会。
仕事が入っていたためあきらめていた会であったが急にキャンセルになり、慌てて予約してなんとか間に合った。会場の中野芸能小劇場はたぶん3年ぶりくらいに足を踏み入れるところ。勝手がわからず、客席と間違って楽屋に駆け込もうとし、出演者(紫文さんとスセリさん)に止められるという恥をかく。スミマセン。
前座は東京ガールズ。何よりもその「福」を呼びそうなビジュアルがセールスポイントになるではありませんか。あとで聞いた話によると、お正月のテレビ出演も決まったとのこと。染之介・染太郎なきあと、見ただけでおめでたいという芸人のポジションが今、空いている。そのあたりにいかがでしょう。メンバーは全員細面の美女なのだが、3人揃うとなぜか私は「お多福」を思い出す。縁起がいい感じがするのです。
寒空はだかさんのスタンダップコメディと真空ギターなどなど。この人ってまさに「子供の一人喋り」そのもの。次々に場面が変わり、シュールきわまりない。「夜鬼芋」には笑った。しかし、やや客席はおいてきぼり気味だったかな。
ブルーのチャイナドレスのオオタスセリさん。何度も観ている私にとっては見慣れたフォーマットで「私の友達」から「私の彼氏」「女達の恋歌」などと続け、「酔っ払い女」まで。その他、アカペラで替え歌を2曲。しかし、やはりまだ客席はおいてきぼり気味。今日のお客さんは、ちょっと重いかも・・・。東京ガールズの出番あたりでうすうす気がついていたのだけど、起承転結があるネタ、説明的なネタが受ける傾向があるが、ちょっとぶっとんだことを言ったりやったりすると、ついてこない。客席に話しかけるような方法のときは反応が良いが、歌のときや早口のトークのときは遠巻きに見ていて終わったらとりあえず拍手する、みたいな。なので、スセリさんが熱演しているときも、食いつきがいまいちの感じがしていて、スセリさんが終わった時点でも、まだ客席の空気にばらつきが・・・すっごく楽しんでる人とそうでもない人の温度差があった。
今回、そこをすべて持って行った感があるのが、紫文さんである。小寿々さんを従えての新内「鶴八鶴次郎」(オチ付き)の前弾きが始まってすぐに、客席がしーんとする。そう、今日は「聞きたい」お客さんで、なおかつ徐々に温めていかないと着いて来れないお客さんであったのだった。三味線の音を聞くうち、客席全員の気持ちがステージに集中するのがわかった。こういうときって、ホントにアタマの中で音がするっていうか、「あ、来た。」ってわかる。何度体験しても鳥肌の立つ、客席と舞台がつながる瞬間。その後、鬼平の新ネタとおなじみのネタと暢気節など。みんな食い入るように観ていて、おもしろいように反応が。「表現のサイズ」ということをしみじみ考えた。芸は同じでも客は毎回違う。だから、その都度違うサイズの表現が必要なのだ。どのくらいのサイズにするか判断するのも芸人さんの腕だ。

そうそう、今回の紫文さんには自分の「売り」がわかった人のオーラが感じられた。「売り」がわかった人は強い。今後、自ずとキャラクターもポジションも自然に確立していくことでしょう。当人が決めずとも周りが動いていくような気がする。

が、後半、全員出てきたところでは、「ストよば音頭」生演奏はあったものの、とりとめのないまま中途半端なうちに終幕となった。あれだけ役者がそろっていながら、ちょっともったいないかも〜。「ひとりモン」というテーマで集まったのだし、「独身」ネタでトークでもすればよかったのに。その辺、興味のあるお客もいたと思うぞー。独身であることは、ファンに夢を見させるための大事な商品価値なんだから。
しかしあのまとまりの無さこそ「ひとりモン」の真骨頂とゆーか、なんでそれぞれが独身なのかわかった気がしたのだった、はははっ。
(でも、はだかさんは結婚してるってどっかで聞いた覚えがあるのだが・・・ガセ?)