お気に召しますで笑歌 Vol2

7月に行われたコタンコミックソングデーの第2弾。実は最近、私が一番評価しているライブである。
出演者は新曲を5曲披露するというノルマを課される。(ゲストはその限りではないらしいが。)そのノルマが果たされるとは限らないが、その課題があることでイベントとしての「核」が確立し、観る側としての立ち位置も安定する。演る側と見る側の間に共通の認識ができることで、一体感も生まれやすくなる。曲が出来ていれば出来ているで面白いし、出来なきゃ出来ないでその「出来ない状況」をどう料理して見せてくれるのか、その辺も芸人の腕のみせどころでしょう。
かといってピリピリするでもなく、みんな自分の才能を使って遊んでいるような、自分以外の出演者が出してくるものを純粋に楽しんじゃってるような、そんな余裕を感じる会なので気に入っている。いうなれば、「戯れている」って感じかなあ。

出演は弱つよむ、すわ親治オオタスセリ、あべあきらの4名。その前に前座というか、オオタスセリさんの教え子のお笑いコンビ「どせい」による漫才が。これは・・・すいません。印象にまったく残ってない。今後頑張ってください。

弱つよむさん。この人の歌詞世界、結構好きである。深刻なのに軽やか、壮絶なのに笑える、親しみやすいのに無頼派オオタスセリさんとは古い友達らしく、MCで聞くエピソードがいちいち可笑しい。前回のMCだけど、「オオタスセリさんはすばらしい人です。神様のような、キリスト様のような人です・・・磔にしたいくらいです。」っていうのがすごくツボに入ったのを記憶している。前回は「自己破産」「糖尿」など、かなり自虐が入った曲が多かったのだが、今回のテーマは「変態」?なのかな。こっそりブラジャーをつけるのが趣味の男の歌や、二丁目においでよというホモ賛歌、それとあと一曲馬鹿はけっこう危険思想だというようなテーマの歌。ぜんぶ、美しく軽やかなアルペジオが付いている。この、無駄に美しいってのがいい。この人観てると友沢ミミヨのイラストを思い出す。アルバムジャケットに是非使って欲しい。

すわ親治さんはこの前ライブを観たし、そのときと同じネタだったので特にインパクトがあったところはなかったけど、同じネタでも小屋の大きさによって表現のサイズを変えるんだな、というのが感じた部分だったな。

休憩をはさんでオオタスセリさん。5曲作るというノルマが果たされてはいるが、不完全。という状態を逆手にとり、笑わせてくれる。でも前回より、曲らしい曲が多かったと思うぞー。よかったのは「すわ親治さんにささげる歌」として歌ってくれた曲。タイトルはわからないけど、一回聴いただけで憶えちゃいました。「おーこーられたーおこられたー歌をうたっておこられたー」っていうヤツ。セリフ入りの曲がやっぱりいいなあ。

しっかし今回はなんといってもあべあきらさん。感服いたしましたって感じです。私、あんまり好きじゃなかったのだけど、いやあ・・・やられました。5曲作ってくるっていうノルマをきちんと守り、新曲5曲。それもアレンジもけっこう完成されているもので、内容もしっかり笑えるもので・・・。やはり本職が放送作家さんだということで、テーマを見つけて締め切りを設けて書く・・・ということに慣れているのかもしれない。一人でブレーンストーミングがうまくできる人なのだろう。「締め切り」「チューニング」(わざとギターのチューニングを狂わせて歌うという実験的作品)、その他何曲かあったが、なんといっても「馬鹿神輿」が圧巻。馬鹿神輿・・・馬鹿しかかついではいけない神輿だが、馬鹿は神輿の担ぎ方を知らないので、全員神輿の上に乗っている、から始まる超絶シュールなナンバー。とても説明できません。私のアタマのなかには相原コージの絵が浮かんでいた。(のちにわかったことだけど、赤塚不二夫的な世界をイメージした曲らしい。)パッと見たルックスの「だらしな作り」にだまされていました。反省します。すごい人でした。

ライブとしてはとてもよかった。出演者のプロ根性も見せてもらえたし、みんな面白かったし。でも小屋の方が・・・なにぶん受け入れ態勢がよくなかった。細かくは書きたくないけど、出演者がプロなんだから、受け入れるハコの方ももっとプロになってほしい。演じる人が演じることだけに集中できるように、配慮してあげて欲しい。あと、お客が観ることだけに集中できるようにも・・・ね。