ポコ・ア・ポコ コンサート

写真は最近見つけたアコーディオン型ライター。あまりにも私の楽器に似ているので衝動買いしてしまった。火をつけるとひずんだ音色で「It's a small world」が流れます。

まあそれはさておき、コンサートとはいうものの、実質は私の通っているアコーディオンサークルのおさらい会のお話です。まあ、生演奏があるところならとりあえず「ライブ」ってことで、無理やり、ね。正式名称は「修了演奏会」。私の所属するサークルは初級と中級に分かれている。で、その中級に進むには必ずクリアしなきゃならないのが「修了演奏会」。ここで人前で演奏を披露し、晴れて中級の仲間入りというわけである。今回、ワタクシは初級の修了生として、生まれて初めて「独奏」をステージで披露せねばならないというわけなのであった。今まで人前で演奏したことが無いではないが、ユニットだったりバンドだったりで他の楽器の陰に隠れるように演奏していただけだったので、正真正銘自分ひとりってのは初めて。
選んだ曲はシャルル・トルネの「ラ・メール」。エスティマのCMで流れていたのが耳に残っていたのと、ジャンゴ・ラインハルトステファン・グラッペリ版の演奏も「美しいなあ・・・。」と愛聴していたので。

ジャンゴロジー~スペシャル・エディション

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メロディもシンプルだしこれなら弾けるかも・・・と思ったのがきっかけ。しかし、それは大きな間違い。確かに単純なメロディだけど、それが転調しながら最後まで続くといういわゆる変奏曲スタイルの曲なので、旋律で盛り上げる部分が無い。メリハリ無く演奏すると、ものすごく単調なかっこ悪い演奏になる。音の強弱で表情をつける必要がある。これにはかなり蛇腹のコントロールが要求されるのだ。それと、ゆったりと音を伸ばすところが多いので、ブレス位置を間違うと息が足りなくなる。転調が3回!というのもけっこうな難関。イントロがいきなり3音、4音の和音というのにも苦しんだ。
さらにこの曲、スタンダードナンバーとなっているため、いろんな解釈ができるのにも泣かされた。演奏会までに3人の先生に指導を受けることになったのだけどそれぞれの先生の解釈も微妙に違い、どの意見に沿って弾いても、それなりに完成された曲になってしまう。うーん、これが「名曲」の「名曲」たるゆえんでしょうか・・・。さまざまに解釈でき、そのどれもが正解。ゲネプロの直前まで、かなり揺れ動いていた私であったが、悩んだ結果が演奏に反映されるほどのテクニックがあるでもないので、落ち着いて基本に忠実に・・・を目標におくことに。初心者ですから!
そんな中で中山英雄先生が言った「あなたなりの海のイメージを持って演奏しなさい。聴く人には必ず伝わります。あなたの海はどんな海なのか、イメージして音楽を楽しんで下さい。」という言葉は意識していた。「私なりの海」って何だろうか・・・海っていうと思い浮かぶのが江ノ島だとか大洗、日本海などなど、日本の海ばかりで、「ラ・メール」に似合うような穏やかで雄大な海のイメージが私の中に無かった。音楽を演奏するということは技術はもちろんだけど、感性も必要なんだなあ。肉体的な鍛錬はもちろんだけど、自分の中に豊富なイメージを持たねばダメなのだ。映画を観たり本を読んだり旅行をしたり、一見遊んでいるように思えるような経験が生きてくるのであろう。

会場は与野コミュニティセンターというところで、ちょっとした小学校の講堂といった雰囲気。狭いながらもステージも幕もちゃんとあって、「おお、舞台だー!」という感じ。雰囲気は手作り感覚の学芸会テイスト。こういうのって、若い頃は恥ずかしくていやだったんだけれど、最近わりと素直に楽しめてしまうな。なんでだろ。大人になったのか。プログラムにはお客さんと一緒に歌うコーナーもあったりしてアットホーム。お客様もファミリーな感じ。私の母・妹・妹の彼氏・私の友人も観に来てくれた。
私の出番は初級の部の一番最後。順番が近づくにつれて、どんどん手が冷たくなっていくのにびっくり。あんまりドキドキはしないのだけど、舞台に上がる頃には肘から先が自分の手じゃないみたいだった。うわー、こんなんで弾けるのか???そこはまあ、何百回も練習したからちゃんと指は動くもの。しっかし、いくら練習しても、本番で演奏が成功する保証ってまったく無いんだよね。最後の一音を弾くまで、まったく気が抜けない。スリリングだなあ。あー緊張した・・・。演奏が終わった途端、肘から先にドッと血が流れ込み、みるみるあったかくなっていった。ははは・・・。でもこの緊張感、案外楽しいものだということも知った私。クセになりそう。

今回たかだか3分弱の演奏のために、ものすごくいろんなことを考えたり感じたりした。勉強になったです。やっぱアタマで考えてるだけじゃ見えてこないことっていっぱいあるのだわ。

この演奏会の目玉は、じつは先生の演奏である。これが目当てで来ている人も多いそうだ。松永勇次先生による演奏が3曲。今回は最近なくなられたサークルのメンバーの遺品であるBugariで。クラシックアコーディオンの第一人者御喜美恵さんはかつて自身のコンサートの中でアコーディオンという楽器を「魅せたがる楽器・唄いたがる楽器」と表現した。そんなアコーディオンらしさが最大限に発揮された演奏でした。さすがなのだ!

終わった後、軽い打ち上げを。会議室で机をぐるりと並べ、アルコール無し。お茶と珈琲、お菓子と果物。なんとも学校っぽい。そこで各自が自己紹介など。全体を聞いていて感じたのは、どうやらアコーディオンをやっている人は音楽やって自分が目立とう!という気持ちは少なくて、唄の伴奏がしたいとか、孫や家族や身近な人に聞かせたいとか、そんな動機で始めた人が多いようだ。ライブとかコンサートという形より、慰問やボランティアで披露している人が目立つのも特徴。とにかく、なんか面倒見がよい人が多い。学校の先生が多いせいか、団体行動をするときの役割分担も鮮やかだ。そして揃いも揃って励まし上手の褒め上手!!

そんな人たちに囲まれてすっかりいい気分になり、これからもずうずうしくいろんな現場に出て行こう、と決意した私であった。単純。