オオタスセリ・あべあきらのお気に召しますで笑歌?

ひとりの芸人さんを継続的に観ていくときの時間的なスパンって、どのくらいがいいんだろう?
というのが客としてのワタクシの最近の課題である。
はまるときは集中的にはまるので、毎月のように観に行ったりするのだが、テレビ的な世界と違って、芸人さんの打ち出してくるものってそんなに急激に変わらない。本来そういうものなのだ、と最近やっと理解してきた。
芸人さん本人のパーソナリティが好きだったりすると毎月でも観に行きたいと思ったりもするのだが、そこでまた以前見たものと同じ内容で、かつ質的にも同じものを観てしまうとき、そしてそれを許しつつある自分を感じるとき、どっか顔見知り感覚となった甘さが居心地悪い。そんなの誰のためにもならない。
芸人さんを単品で観ていく場合、3ヶ月から半年くらいの間隔を空けるのがいい感じかなあ・・・って思い始めている。


芸人さんが単品では単調になりがちであるので上記のように感じるのだが、ときどきこんなコラボレーション企画をやっていただけると話は別である。
オオタスセリ・あべあきらのお気に召しますで笑歌?」はオオタスセリさんとその師匠?あべあきらさんを中心とした「コミックソング」をテーマとしたライブ。まず二人の間で「新曲を5曲やる」という約束事があったので、新しいものが確実に聴ける企画で、さらにゲストが2名(あさひのぼる、弱つよむ)ということでオオタスセリ版「人間交差点」って感じ。それぞれが実はコタンを媒体にしてつながっていたということもあり、気のおけない仲間どうしの馬鹿騒ぎに参加させてもらっているみたいで、全体的にパーティ感あふれるライブでありました。


最初はあべあきらさんとオオタスセリさんが二人で掛け合いをしながら新曲を披露しあうが、スセリさんのは新曲といっても曲としてまとまっておらず、まだアイディアの段階であるというのが多かった。でもそれをどんどんギター弾きながら発表してしまう楽しさ。雑談的な楽しさである。さらにあべさんの唄のダジャレにいちいち眉をひそめるスセリさんの顔が可笑しい。


ギター漫談のあさひのぼるさん。フルートを吹きながら漫談をする人、と思い込んでいたらそれは違う人だった・・・。うーむ、私はあまりこの観客参加型のスタイルが好きではない。でもコタンのような狭い空間には似合っていて、演ってる方も観てる方もちょっとしたカタルシス。客席一丸となる感じ。


お着替えして黒いドレスのスセリさん。ラインストーンのベルトがキラキラ。そうそう、こういう人工照明の中では、ヒカリモノって絶対正解。視覚だけで嬉しくなるの。女性だけかもしれないけど、ステージ上にキラキラしたものがあるとスペシャル感が増すのですよ。
新曲をいくつかとあとは「酔っ払い女」「キッチンドリンク」観るたび迫力が増していく気が。うーん、やっぱり「ストーカーとよばないで」よりこっちが真骨頂だと思うのだけどねえ。なんかあの唄、世の中ではかわいい唄みたいに解釈されててちょっと違うと思う。


弱つよむさんという知らない芸人さん(ホントは作家さんらしい。)の歌詞が壮絶で、今回は私の中では一等賞。真っ赤な髪、緑のベストとパンツ、黄色のシャツで小太りというインパクトのイデタチで、喋りも歌声もやわらかいのに、かますギャグはシニカルで毒入り。テーマが「糖尿」、「自己破産」など・・・なんというかもはや「無頼派
5月にペーソス観たときにも思ったけど、自虐を笑いにさせたらやっぱり男の人の方が強いかも。かなり強烈なレベルまで行っても、まだまだ笑いにできる。女性にはちょっとねえ・・・とくに肉体的なことはねえ。
スセリさんの唄も自虐系、依存症系ではあるけれど、ネタがメンタル系なのと本人が健康そうなので笑って見てられる。リアルじゃないから。
が、彼の唄にはかなりリアリティがあった・・・なのに爆笑。なんなんでしょう、これは。


その後、あべあきら&リトルリーグ(矢野さんというマンドリンの人とのペア)がトリでいろいろ。いい塩梅の「だめな大人」加減。青臭さ皆無。音楽やお笑いをやる人には、万年青年っぽい人とだめな大人な人といるような気がするが、あべさんは見事に後者。あと「モテ」と「非モテ」という分類では「非モテ」・・・になるかと思いきや、意外と一周回って「モテ」かもしれない。
まあ、唄の内容は正直言って私の好きなタイプとはやや違う(汚い言葉をそのまま使うのは反則と思っているので。)けど、いやあ、そんなこと気にしている自分が小さく思えたわ。


このライブで印象的だったのは、出演者の手が震えているのが見えたこと。顔も口も冷静に面白いことを喋ったり唄ったりしているのに、ギターを弾く手や楽譜をめくる手がぶるぶるしていたのだ。
うーん、戦っているのですねぇ。
(え?アル中?)