木村万里シャッフル 笑いの人間交差点 第二夜「ライブっぽく」

2日目は「ライブっぽく」ということで、客電は落として会場は暗く。出演者と出演者の間はスライドでつないでいた。昨日と会場の雰囲気がぜんぜん違って、いい感じ。今回、ほんとに構成がよく練られていた。どんな空気を作りたいのかがはっきりわかるので、それにどう乗っていけばいいか掴みやすい。見ている方は安心して笑っていられるのだ。

松元ヒロ
 パントマイムを交えて、チャップリンの「街の灯」のストーリーを語りおろし。誰にでも分かりやすく、ハートウォームな世界。今回の出演者の中ではいちばんまともでした。家族と一緒にも見られる。実は私の所属しているアコーディオンサークル関係でうたごえイベントがあったのだが、そのときのゲストが松元ヒロさんだったらしい。わかる気がする。プロレタリア好みの芸?

街の灯 [DVD]

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オオタスセリ中村まり
 スセリさん原作の奇妙な味わいのコント。星新一とか眉村卓のショーショートなような小品。スセリさんのインテリジェンスを感じた。中村まり子さんの声、きれいで怖い。岸田今日子の肌触り。コントというよりは寸劇と呼びたい、笑いだけではない世界でした。言葉づかいが丁寧なのですぐにはわからないけど、よく考えるとすっごく失礼なこと言ってる、こういう人いるよなー・・・というよーな「あるある」系のコントかと思って観てたら、意外にも怪談だったという。音楽ライブの弱点は予定調和になんないと客が満足しないところ。(つまり、毎回同じ曲をやらないわけにはいかない。)コントは予定調和じゃないところが新鮮でイイ。
すわ親治
 セリフはほぼゼロの省エネなコント。舞台でただ動いているだけ。ちびTシャツを無理やり着る、着ぐるみをきてただフラフラするなど、オチもなにも無い動きだけなのに尋常じゃない可笑しさ。いがらしみきおのマンガを活人画にするとこうなるだろう。特に中島みゆきの「ミルク32」に合わせての当て振りが私の笑いのツボにジャストミートしてしまい、客席にて死にそうになる。もうこの曲、まともに聴けないー。前回のギター弾き語りとまったく違う顔。引き出しの多い人なんだなー。最後の挨拶のときに「今日は喋りすぎてこんな声になってしまいました。」としわがれ声で登場したので爆笑。ここまで観てはじめて本日のすわ親治のネタは完結するわけだね。面白いよー。今度この人の単独ライブがあったら絶対見に行こっと。
(ちなみに「ミルク32」は以下に収録。)

愛していると云ってくれ

愛していると云ってくれ

ナギプロパーティ
 出演者の中では若手。学生演劇風の雰囲気。セリフのニュアンスのずれを積み重ねての笑い。観てすぐに笑えないので、シチュエーションを理解するまでの忍耐がやや必要。ちょっと「サシスセソ」の発音が良くない人がいて気になってしまった。でもまだ原石って感じ。これから磨かれていくのね。個人的には選曲がいまいち。誰でも使うだろ!って曲が多くて・・・。でももしかして、今回の客層にはそーでもないのだろうか。音楽は難しい・・・。
姉様キングス
 待ってました!の姉キン。姉キン流の都々逸、小唄に続き、問題のチョンコ節、あほだら経。シモネタも下北沢のライブのときよりはだいぶ控えめでしたね。それでも客席の空気が固まる瞬間を何度も体感。これもまた快感。「客に引かれてナンボ」みたいな腹の座り方が好きだー!ところで私の中でシモネタへの反応は「あるある」と「ないない」に分けられる。姉キンの場合「ないない」ばっかりだからOKなんだろう。笑ったところで自分の品格まで下がらない安心感。下品さはすべて、彼らが引き受けてくれる。笑うと自分の中の何かがバレてしまいそうなのがシモネタの怖いところだけど、こういうのならなーんにもバレないし。過激なようでいて意外と罪が無いのだ。でも姉キンに限っては、昨日の「寄席っぽく」でもOKだったのでは?なんて思ってしまった。
ペーソス
 50代男性3名。場末のカラオケスナックで遭遇しそうな酔っ払いオヤジ系ボーカル、古賀メロディ風のギターと鈴木史朗っぽい喋りの専属司会という構成。ボーカルの人が喋りも兼任するのが一般的な形だけど、この人たちのMCはすべて専属司会が担当。中年男性の哀愁を切々と歌ったオリジナル曲を軸に、専属司会の人が淡々と語りを入れながら、ときどき効果音楽器を使いつつ絶妙にまとめていく。男版「負け犬」を男性が歌うとこうなるのかー!ある意味、裏オオタスセリ。いやー、「哀愁」ってのは男の専売特許ですね。女には真似できない。女は負けを認めない生き物だから、「負け犬」ってたぶん男性名詞。↓に収録されている曲が中心でした。
おやぢいらんかぇ~

おやぢいらんかぇ~

関係ないけど開演前に紀ノ国屋書店をぶらぶらしてたら、こんなCDをGET!擬音を使った冗談音楽の元祖スパイク・ジョーンズのCD。こんなの出てたのねー。
古くはクレイジーキャッツ、現在ではポカスカジャンの源流がここに。ペーソスもまあ、この系譜でしょうか。

元祖!冗談音楽?ポピュラー編?

元祖!冗談音楽?ポピュラー編?

木村万里さんのサイトを見たらこの日のことがUPされていた。空席がわずかにあったことが残念とのことと、今後「Web.2.0」的な広まりを期待というようなことが書いてあった。

ううむ、おおかたの人にとってライブを見るのはテレビで観たものを確認すること。だからテレビに出ているとか、テレビで宣伝したとかが集客には重要になってしまう。でもテレビでPRってのは、この会の雰囲気にはそぐわないなあ・・・。お客さんの質も変わってしまいそうだし。そこで「Web.2.0」
「Web.2.0」・・・定義するとムズカシー言葉になるけれども、よーするに口コミのインターネット的展開と私は解釈している。今回観て面白いと思った人は、可能な限りネット上に書きましょう。Blogでも掲示板でもいい。ネット上にかかれた文字を読むのは人間だけではない。「信号」としてコンピュータも読むんである。検索システムにヒットしやすいように正式名称で書きましょうねー。ひとりごとみたいに書いたものをコンピュータが広めてくれる、スゲエ時代になったものだ。