木村万里シャッフル 笑いの人間交差点 第一夜「寄席っぽく」

昨年10月に開催された木村万里さんプロデュースのお笑いライブ第2弾。
今回は2日に分けて、1日目は寄席風、2日目はライブステージ風の演出になるという。本日は1日目「寄席っぽく」の日。客電はつけたまま、舞台バックには金屏風、所作台、メクリなどが置かれ、出演者は寄席同様舞台上手から登場する。
メクリを替える、座布団を返すなどの前座役はオオタスセリさんがやっていた。

以下、出演者と簡単な感想など。

オオタスセリ
 サーモンピンクの着物でギター弾き語り。「ストーカーとよばないで」「五月病の唄」「私が通る」「酔っ払い女の唄」コタンのように狭い小屋のときと微妙に表現が違う。やっぱり演劇の血が入ってる人なんだな、と思う。大きいステージが映えるなあ。スセリさんを観ているときに「あ、これってアレっぽい!」とある女性ロック歌手を思い出してその場では納得していたのに、帰宅したら思い出せないんだこれが。誰だったんだあぁ???
(後日思い出した。ロック歌手じゃなくて映画「恋する惑星」のフェイ・ウオンでした。やってることは「ストーカーとよばないで」の歌詞そのもの・・・。)

恋する惑星 [DVD]

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晴乃ピーチク
 ベレー帽の大きめのテーラードジャケット。いかにも芸人スタイルが嬉しい。 客席からお客さんを一人選んで舞台に上げ、似顔絵を書きながらお喋りを。この素人いじりの感覚、なんか見覚えがあるなあ・・・と思って考えるに・・・あ、欽ちゃんだ!と思いあたる。素人いじりっていうのも笑いの一つのスタイルなんだなー、とあらためて認識。欽ちゃん以外だと今では明石家さんま笑福亭鶴瓶あたりが思い浮かぶ。最もテレビに適した様式かも知れない。
だるま食堂 
 おお!まさに生きてるマンガだ!日本のマンガよりアメリカのCatoonに近い。黒いドレスに異常なまでにデフォルメされた胸とお尻。カラフルな髪。初見だったんだけど、なんで今まで見なかったんだろー。すごい好き〜。ナンセンスで何の役にもたたないところ。子どもが真似しそうなバカさ加減がいいです。子どもが真似しそう、ってのがひとつのポイントだな、私にとっては。アカペラコーラス、巧くてびっくり。最後の「聖者の行進」のときのスキャット、すんごかったぁー。
柳家紫文
紫文さんを観たことがあると思しき人が、連れに向かって強力にプッシュするというシーンを複数目撃。(なぜか男性多し。)なんだろ、贔屓にしてることを自慢したいタイプの芸人ってことか?今回着流しではなく正装で出てきたので、「な、何事?」という雰囲気。三味線の音に私の前の席の女性が「あら、いい音ね」と反応。直前がだるま食堂だったため、テーマパークのアトラクション後みたいな余韻が残っていたのを、三味線の音が洗い流して客席がすっかり静まる。楽器って強いねえ。で、「火付盗賊改方長谷川平蔵が・・・」と始まった途端に笑いが起きた。他のライブ会場や寄席では見たことがなかった光景。うむむ、少なくとも今回集まったお客さんの中では平蔵ネタはスタンダードとして愛され始めている証拠ですね。今後メディアへの露出が増えていくならば、なかなか有利な傾向ではないかしら。
モロ師岡
 扇子の代わりにボールペン、手ぬぐいの代わりに手帳、二つ目に昇進するまで背広は着られない、4月に新弟子を採用するが3月に人事異動があるかもしれない等々、落語をサラリーマンの世界に移し替えるとなんでこんなに可笑しいんだろう。両者の世界観があまりにも違いすぎるからですね。この齟齬感、いいなあ。そもそも背広で正座しているってことだけでもヘンだよ。「天狗裁き」をサラリーマンに置き換えて演じるも、ときどき混じってくる古典の世界が可笑しい。「和民」でもなく「白木屋」でもなく「天狗」にしたのはそういうことだったのね。手帳をまるめてカップラーメンに見立ててすするところ、はからずもお腹が鳴ってしまった・・・
林家ニ楽
 フツーの紙切りの後にOHPを使って紙切りを投影しながら、松山千春の曲に合わせてストーリーを。目頭を押さえる人多数。単なる影絵ストーリーではなく、リアルタイムで切り紙を手で入れ替えているという感じが味があってなんとも良い。OHPに指が映ったりするのも楽しい。寄席芸を「舞台表現」として突き詰めていくと、こういう在り方もあるのねえ・・・という一例。(演芸としては反則っちゃ反則だけど。)いろんな曲でやって欲しいですね。曲を選べばいろんな年代に対応可能っぽい。学校寄席とかでやったらどうなるかな・・・。

全体としては、とりあえず面白かった!ということと、観客の体力に配慮した構成に感謝!!ってことだけは書いておこうか。前回は休憩なしで10時頃までだったので、内容はよかったけど体がけっこう辛かったのだが、今回は15分の仲入りがあった。

帰りに隣の席に座っていた老婦人に「あなた脚が長いわねえー。」と声をかけられたので、「いや、こんなの履いてるからですよ。」とヒールサンダルを脱ぎ、床にはだしに立って見せた私。(何をやってるのだ。)まあ、それはいいとして・・・「明日もいらっしゃるんですか?」と気軽に尋ねたら、悲しそうに「家のことがあるので二日続けてはムリ。」との答え。うーむ、それが普通の生活者ってものだよな、確かに。全く気兼ねなく二日とも見られる私は幸せであると同時に、人生にまともに関わりあってないとも言える。いや、ふ、深く考えるのはやめよう・・・。

明日は「ライブっぽく」
姉キンに再会できるっ!楽しみだなあ。