姉様キングス 2Days「音曲ナイト」

私が芸人さんの単独のライブを観に行くきっかけは以下の二つ


1.寄席で見て気になった
2.ラジオで聴いて気になった


しかし「姉様キングス」の場合はそのどちらでもなかった。
ネットで写真を見た瞬間、まさに秒殺で「観たい」と思ってしまったのである。
ネタすら聴いていないというのに。
思ったより、感じたというのか・・・いやそれもちょっと違う。
もっともっと原始的なところで、「い、行かねば。」と引き寄せられた。
本能よりも原始的な性質に「走性」というのがある。
たとえば光に引き寄せられる性質は「走光性」、電気に引き寄せされる性質は「走電性」という。
アメーバとか微生物など、脳を持たない生物が持つ性質だったと思う。
なんか、そーゆう感じで、引き寄せられちゃったみたい。
というわけで行ってきました「音曲ナイト」
私の「音曲」のイメージって、かなりストイック。
三味線をはじめとした和楽器のみの構成を逸脱するものはちょっと・・・とか思っていた。
飛び道具な楽器を使うのは邪道だと。
しかしここまで飛び道具だらけだと、もうなんでもよくなりました。
アコーディオンテルミンバラライカ・・・。
もういいです、おもしろければなんでも!


たったさっき帰ってきたのになんでもう書いているか。
書かずにいられないモンがあるですよ、これが。
夢に見そうで寝るのが怖い・・・しかしもう一度見たい悪夢。
よーするに、死ぬほどおもしろかったああああああああ。


1 夫婦音曲漫才 おしどり
2 芸者音曲漫才 姉様キングス
3 ゲスト ポカスカジャン
4 シャンソンショー ミスジャクリーヌ・マダムアヤメノビッチ


「おしどり」は女性がアコーディオン、男性がパントマイムと針金細工というめずらしいコンビ。
「オスです〜」「メスです〜」と自己紹介。
この女性のアコーディオン、発狂しそうなほど可愛い。
たぶん72か80ベースくらいのものと思われるが、黒鍵が金色で、蛇腹が赤で、ボディが白パール。
どこのメーカーなんだろう。可愛すぎる。
見覚えのあるヘッドマークなのに思い出せない。
なかなか達者な演奏にのせて、「オス」がカラフルな針金を曲げていろいろな形を作っていく。
今日はプログラム上、多少アダルトな会話もあったものの、基本は老若男女、国籍如何を問わず通用する汎用性のある芸。
そして登場したテルミン。なんとテルミンを相手にパントマイム。
テルミンの電子音が、上手いことパントマイムの効果音に。
今までやってた人、他にいなかったの???っていうくらい相性がいい。


姉様キングス」の出番。
パステルカラーに桜の柄の着物(あきらかに化繊とわかる質感!)にラメの襦袢と伊達衿、アメリカ人が勘違いして塗った芸者のような白塗り化粧・・・・なにもかもが「過剰」のひと言につきる。
ひとめ観た途端、頭の中で銅鑼を叩いたようなショックがきた。
最初はA面ということで、比較的まともに都々逸などのパロディ。
それでも十分にアダルトだったのに、B面・・・衣裳を変えて金のビニール(のような・・・??)着物になってからは、もはや手加減なしの下ネタオンパレード。
あれやこれやの部分や行為の名称も、隠語などにせずそのものずばりを口にする。
それが不思議といやらしくない。
たぶんそれってあやめさんが子持ち、染雀さんがゲイ(本当にそうかどうかは知らないけど、そういう設定になっている。)で、ある意味「現役の男と女」では無いせいじゃないかなー。
ヘテロで独身の人がここまでやると、「生々しい」「痛々しい」「汚い」のどれかになってしまいそう。
そんな二人がさらにとんでもない衣裳とメイクをしているのである。
強烈な浮世離れ感のせいか、下ネタがリアルにならない。
ファンタジックですらあり、ポップでもある。
言葉をおもちゃにして遊んでいる感じ。
楽しすぎるー。大人でよかったぁ。


ゲストはポカスカジャン
先日の鶯谷で聴いたネタも多かったけど、短めのピリッとしたネタはやっぱり今回みたいな小さめの小屋の方が映えますね。
ネタはワールドミュージックつながりで、いろんな曲のパロディをするというもの。
各国の民族音楽の特長、リズム、発声を完璧に消化した上でデフォルメしているのがスゴイ。
それにしても演奏、巧いなあー。
あんなに巧いのに、残るのが爆笑だけというのがいいねえ。
この「無駄に巧い」という感じが、ゼータクだ。


ラストはおしどり「メス」のアコーディオン演奏に合わせて、シャンソンを。
越路吹雪を強烈にしたようなドレスとメイクの二人が唄いまくる。
この辺からがもはや悪夢です。
特に歌詞をいじらず、そのまま歌っていた曲もあるのに可笑しい。
ミス・ジャクリーヌ(染雀さん)の「人生は過ぎ行く」はたぶん原曲のままなのだが、金髪かつらの乱れっぷり、羽織ったコートやスカーフのゆがみっぷりなどのたたずまいがすでに可笑しい。
エモーショナルでドラマチックで、シャンソンの歌い方としては間違っていないのに、なぜか笑いが起きちゃう不思議。
感心したのは「嘆きのボイン」をメジャーコードに転調してシャンソンアレンジにしたもの。
ちゃんとシャンソンになってた。歌詞はそのままだそうなのだが、意外と味のある歌詞だったのね。
そうこうしているうちに最後の曲となり、アンコールはプログラムの中にもあったオリジナル曲「エクスタシーいくよくるよ」
この曲が耳に残る曲で、いまも頭の中をぐるぐるしている。


説明される笑いより演じる方が積極的に壊れてくれる方が好きなので、今回は出演者全員、壊れててヨカッタです。
とくにあやめさんの壊れ方・・・すごい。
スセリさんをはじめて観たときも相当壊れてると思ったけれど、また種類が違う。
あやめさん、経産婦の迫力である。
生物のメスとしてやるべきことを済ませた女の強さである。
怖いものなし。


帰りに知り合いに紹介されて、初めて木村万里さんとひと言ふた言お話をした。
ううーむ、作詞家の山口洋子さんに似ている・・・。
パワーがある女性に共通する人相なのですね、たぶん。

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