ポカスカジャン 10周年記念ライブ キング・オブ・ベスト

スタイルパロディが好きである。
と、書こうと思って、「スタイルパロディ」の正しい定義って何かしらん?と気になり、Googleで検索してみたら、昔ワタクシがWeird Alに嵌ってたときに書いた記事が真っ先に引っかかってきただけで、あとはナシ。
もしやあまり一般的な言葉ではないのかしら。
ものすごくフツーに言えば「カバーバージョン」というものだが、単なるカバーよりもっとデフォルメの効いた、笑いの要素の強いもの・・・である。
また、普通はカバーといえばメロディを踏襲し、楽器を変えるとかアレンジを変えるとかなんだけど、「スタイルパロディ」と私が呼び習わしているものは、ある曲の楽器構成、アレンジをまったく違う曲に適用するというやり方も指している。
まったく別の曲の持つキャラクターをまったく他の曲にぶつけることで生まれる齟齬を楽しむもの、それがスタイルパロディだ。
古くはサン・サーンスの「動物の謝肉祭」の「亀の行進」まで遡ることができる。
これは「天国と地獄」(フレンチカンカンで使われるあの曲)をものすっごくゆっくり演奏することでおもしろさを出したもの。
あー、お笑いジャンルの中で言うと「冗談音楽」って言われてるヤツなのか。
このジャンル、意外と日本で見かけない・・・ような気がする。
私には大滝詠一くらいしか思い浮かばない・・・。(不勉強なだけ?)
日本の音楽芸って、どっちかというと歌詞で笑わせるのが多いような・・・。
日本は音楽史的に声楽の要素の強い文化だということと、言語がほぼ単一だから言葉にすればほとんどの人に伝わるというのも要因だろう。
対して西洋音楽は器楽要素が強い・・・つまり唄より楽器の主張が強い傾向にあるそーだ。
(参考までにこの辺の知識のベースは

からでございます。この本、すっごい役に立つ!)


んで、いろんな国からの移民で構成されているからだろうと私は推察しているのであるが、アメリカではスタイルパロディを含む冗談音楽の層がとっても厚い。
私の敬愛するWeird Alもこのジャンルの中の人である。(父親が東欧移民)


ポカスカジャンに関してはときどきテレビで見かけるなあ・・・程度の認識だったのだけど、ある日ラジオで「俺ァ東京サ行ぐだボサノヴァ」を耳にして衝撃を受けた。
日本でここまでスタイルパロディをできる人たちがいたとは!!!
スタイルパロディって聴いてる分には楽しいが、演る側にとってはかなりハードルが高い。
まず楽器が巧いのは大前提。
その上で音楽のスタイルの骨格(リズムや音階の特長)を理解していないといけない。
さらにパロディ対象に選ぶ曲の一般的な認知度を客観的に把握していないといけない。
(マニアックすぎる曲を選んではダメ。わかんないもん。)
それらの条件をすべてクリアしていた。
レベル高いっ!


そう思ってからけっこう時間は経過してしまっていたが、なんと10周年記念ライブを鶯谷で行なうという情報をキャッチ。うちから駅ふたつ!!
場所がもとグランドキャバレーである「東京キネマ倶楽部」であるということにも興味を惹かれ、はじめて彼らのライブに足を踏み入れたのでした。
今回は一人で行った。
というのは彼らはワハハ本舗系なので、ちょっと友人を連れて行くのが不安だったのです。
(シャレにならないシモネタがあったりすると怖いので・・・。)
会場に着くとなるほどグランドキャバレー。
椅子はビロードっぽい一人掛けソファ。丸テーブルを囲んで座る。
見上げるとミラーボール。
ステージは二階建てになっていて、ステージ左に階段があり、その手すりの曲線がいかにも昭和。
また、トイレのドアがアーチ型なのもいかにも昭和。


というところまでで眠気に負けて中断して本日3月30日に至り、その間にライブをいくつか見てしまったため、いささか鑑賞直後のインパクトは薄れてしまった・・・。
でももう一度観ろっていわれたら喜んで観るね。
毎日見ろって言われても観るかもしれない。
ってくらい気に入ってしまった。
全体の構成は数ある彼らのネタの中から(480ほどあるそうだ。)五十音順にテキトーに選んでやっていくというもの。
まあ、あらかじめ大筋は決まってるんでしょうけど、にしてもロックもフォークもボサノバもインド音楽も、骨組みを見抜いてネタとして使いこなす技量がすごい!!
また、わりと歌詞よりはリズムや動き、音楽の作り方で笑わせるものが多いので、海外公演って案外いけるのかもしれませんねえ。
ぜんぶ面白かったのだけど、とくに最後のロックメドレーは圧巻だった。
バンバンバザールとの共演だからこそ実現できた音の厚さなんでしょうけど、これはもう「演芸」って呼んではいけないシロモノなのではないでしょうか。
もはや「ショー」というべきものでは・・・。
(キングクリムゾンには思わず飛び上がって喜んでしまった私。ちゃんと変拍子してた・・・演奏巧いなあ。)


のんちん、省吾、たまちゃんの3名は私と音楽的には同世代。
80年代に青春を送った人たちだ。
80年代はすべてのジャンルの音楽への距離感が同じになりつつあった時期。
ロックの進化はパンクまで一息ついた感じで、次に来たニューウェーブ台頭期からはもうなんでもあり。
あるジャンルの代表的な曲はコレ、このジャンルならコレっていうような情報処理的な音楽の聴き方をすることが可能になってきた時期だったと思う。
演歌からフォーク、ロック、民族音楽、現代音楽までなんでも聴けて、「記号」として語れちゃう。
音楽が好きであればあるほどそーいう傾向になってしまう、そんな時代だったよーな。
だからこそできるスタイルパロディなのかも。
いわば「音楽のモノマネ」なのね。


ところで3人のメンバーだが、「のんちんVS省吾」の掛け合いは演芸的な印象があった。
つまり、ひと言何かいえば間髪いれずに反応が返ってくるテンポの良さ。
一般的にはこれを息があっていると見なすのでしょう。
しかし、VSたまちゃんのときって、反応が返ってくるまで微妙な間があるのだ。
さらに何を言い出すかわからない。
反応を待つ一瞬の不安定感がなんともいえない!


最後の「はいどーも」という曲には泣けましたねえ。
これは芸人さんに聴いて欲しい。

キング・オブ・ベスト

キング・オブ・ベスト