キースエマーソンへの手紙 Vol2

※ 演芸だけじゃなくて、音楽ネタもここに書くことに決めた!なので去年のライブだけどここにコピっちゃえ。
(2005年7月7日に見たライブです。)


ピアニスト黒田亜樹さんとパーカッショニスト神田佳子さんとのコラボレーションライブの第2弾。
女2人でELPをカバーするという企画で、昨年は黒田さんの企画アルバム「展覧会の絵&タルカス」のプロモーションと言う色合いが強かった。

タルカス&展覧会の絵

タルカス&展覧会の絵

しかし今回はもっと自由に、キースエマーソンがカバーしたクラシック曲をまたカバーするという「逆輸入バージョン」でのライブであった。
昨年のステージもよかったんだけど、まだなんとなく2人に遠慮があったというか・・・キースエマーソンに対しても、共演する2人同士の間にもまだなんとなくためらいがあったような感じがして、今思えばおとなしめな演奏だったような気がする。
まあ、そのときはうわーっ迫力!と思って見ていたんだけど、今年の2人を見てしまうと、去年はやっぱ地味だったのだわー・・・と。


まず黒田さんのピアノの気迫。
ピアノを叩き壊すのではないかと思うようなパワーで鍵盤を叩きまくる。しかしこの人は楽器を壊すようなことはしないだろうという安心感があるのよね。
安定感のある狂気、といいますか・・・。
今年の春に第一子を出産したのだそうで、すごく肝の座った感じに見えたのはそのせいか。
ミラノで出産したそうだが、夜8時に病院に行って、8時25分には生まれてしまったとのこと。
本当に楽しそうに、力強くピアノを弾く人である。
ときどき魔女のような凄みのある表情を見せるのに、演奏が終わって喋りになるとケロッと普通の女の人になってしまう。
女ってヤツぁ、なんかスゴイなあ。


パーカッションの神田さんは一人で何種類もの打楽器を操るので、その動きを見ているだけでも飽きない。
それになんていうか、演奏する姿が「真剣な小動物」って感じ。
せわしく動く姿が愛らしい。
途中、クロアキさんが譜面を楽屋に忘れたといって取りに戻ってしまう一幕があり、その間つないでおいてと言われた神田さんだったが、喋りは苦手らしくてとっても焦っていたのがとってもかわいかった。ぼのぼのでいえばシマリスくんみたいだ。
彼女も昨年結婚したとのことで、人生ひとやま乗り越えた女二人のプログレは、何かがふっきれたような自由さにあふれ、演奏している当人達がとても楽しんでいる様子がよかった。
女性ミュージシャンにありがちな痛さ、切なさなんていうものが皆無。
ディーバっぽい感じともなんか、違う。
もっと根っこの太い、原始的な、安定した何か。
クロアキさんの「なんでも、どーんとかかってきなさいっ!」っていうような、フトコロの深さ、強さ、明るさと、それを受けて立つ神田さんのプロフェッショナルさと柔軟さ。
この強さと柔らかさってのが、もしや女性そのものなのではないかしらん。
これってキースエマーソンの演奏では感じなかったイメージだ。
楽器が異常に巧い男性と言うのは、なんだか危なっかしくて怖い。


しかし「ぜひ、呑んだり食べたりしながら、リラックスして聴いて下さい」なんてクロアキさんは言っていたが、そんなリラックスして聴ける曲なんか一曲もありませんて・・・なんせキースエマーソンですからな。
特にものすごい高速演奏の「ホウダウン」は圧巻であった。もう、前衛ぎりぎり。
ぜんぶ、コブシを握り締めて聴くような曲ばっかりだったからねぇ・・・。
演奏中に飲み食いしている人はいなかったですよ、さすがに。
たった2人だっていうのに、音の厚さ、密度ったら信じられないくらいだ。


アンコール前の「タルカス」は昨年よりこなれていてとてもよかった。


さて、クロアキさんは「展覧会の絵&タルカス」のアルバムをキースエマーソンに贈ったそうなのだが、キースエマーソンの母親が聴いてくれて大変気に入ってくれたそうである。
何でも「立ち上がって喜んだ」のだそうだ。
キースエマーソン当人よりも、その母が喜んだというのがなんかほのぼのしてて笑えた。

タルカス(K2HD紙ジャケット仕様)

タルカス(K2HD紙ジャケット仕様)

展覧会の絵(紙ジャケット仕様)

展覧会の絵(紙ジャケット仕様)