みたか de きいたか Vol9

第9回を迎えたこのライブ。
私にとって季節行事になりつつある。
着物を着るという義務を自分に課している日でもある。
今回も着てみたが、あまりひさしぶりすぎて忘れていた。
歩幅が半分になるということを・・・ってことで遅刻してしまいました。


前座は小寿々さん&小梅さんのユニット。
私は遅刻してしまったので最初からは聞けなかったが、掛け合いの漫才っぽいおしゃべりをしながら鼓と三味線。
一人でも麗しいのだけど、二人いるとさらに華やかでよいですね。
女は女であるだけで男に勝ってしまう瞬間がある。
そこにいるだけで嬉しいと思わせる力。
それが「女子力」。麗しさも芸のうち。
私も磨かねば〜!


さて紫文さんの方はというと前半は新内「明烏」を中心に据えてじっくりと。
最初から大ネタでみんなついていけるのかしら?と思ったけれど、事前に配られた歌詞のプリントが大正解。
これを見ながら導入のお喋りと説明を聞くことで、お客の中に聴く空気が完璧に整った。
おそらく誰の胸の中にもあった「聞き取れないかも。」という不安がここで払拭されたのでしょう。
目からの補完は大きい。
後半は小唄などはさみながら雑談のようなお喋り、サイトへの投稿作品を含めた「長谷川平蔵」の新作など。
で、最後は「大津絵」で〆めだった。


今回はライブの最初から最後までゆったりした一定の波長があって、巧みに乗せられているうちにいつの間にか終わっていたという感じだ。
落ち着いてて、なんというかアダルトな高座でした。
(いやらしい意味では無くて!大人っぽいという意味で。)
アグレッシブなところはほとんど無かったのに、不思議に惹きつけられてるステージ展開。
肩に力が入ったところが無くて唄も演奏もMCも軽々やっているように見えたし、客である私達も緊張することなくリラックスして見ていられた。
しかし、それだけきっちり作りこんでいたってことでしょうねえ。
そうでなければ、あそこまで気持ちよく流れる筈ないものね。
優雅に泳いでいるように見える水鳥ほど、水面下で足を激しく動かしてるもので・・・。


さてさて、邦楽をカジュアルに楽しむ試みはいろいろあって、そこそこ成功しているアーチストがいっぱいいるけれど、たいてい「洋楽の要素」をどこかに借りている。
リズムや奏法、曲のジャンル、セッションする相手の楽器、とか。
結果、三味線でも琴でも和太鼓でも、単に「ポピュラー音楽の中でちょっと変わった音のする楽器」になっちゃっている。
それはそれで否定はしないが、洋楽の力が無ければ勝負できないの?私達の生活に入って来られないの?って歯がゆい気もするのだ。
そんな中、邦楽の方法論だけでもじゅうぶん我々の日常と「共に在る」ことが可能なのだ、ということを教えてくれるこのライブは貴重だと思う。(同じ意味でお弟子さん達の「さのさナイト」も有意義だなあと思ってます。)
まだまだ表現の形は模索中だと思うけど、古典のアイデンティティーをきちんと保った上でカジュアルに(かつカッコよく!)・・・ってできる人って他にいないので、今後も細く永く続けてもらいたいなー。
今回みたいな感じだと、もっと年齢を重ねたところでまたさらにイイんじゃないかしらね。


ところで紫文さんは今回(も?)風邪をひいてしまい体調が悪かったらしいのだが、そのせいかどこか陰のある感じがあり、それが演目全般にマッチしていていい雰囲気だったのですよ、ホントに。
「役作りしたんですか?」って聞きたくなるくらい。
(ご本人は不本意ですよね・・・ごめんなさい。)
これはもーちょっと女性客に見てもらいたかったねえー。
なんか今回に限って男性客が多くて残念なことでした。