谷中芸工展「江戸の芸能を嗜む」

なんだか秋になってから、気分も体調も沈みまくり。
目の前にお堀でもあったなら、身投げしてしまいたいような気分である。
原因不明の発疹が治らず、脚なんか天然痘の人みたい。
仕事のせいで鬱が入り気味で、おまけに連休になったとたんに風邪を引き込み、なんだかもうやる気ゼロ。

でもまあ、近所なら・・・。
ということで、徒歩でいける範囲で行われた演芸会に行ってみた。
谷中芸工展の企画の一環として大行寺で開催された「江戸の芸能を嗜む会」である。
出演は柳家小はん師。
なんと無料である。
なんでも主催者と高校の同級生だということと、若い人が少しでも落語に触れる機会が増えれば・・・ということで、無償で出演してくれているのだそうだ。
うーん、すばらしい。
今回は落語だけではなく、新内三味線の出演もあり。


柳家小はん 「明烏
岡本宮之助 「?」
      「十三夜」


小はん師の「明烏」は噛んで含めるようでとてもわかりやすかった。
今まで何人かの落語家で聞いている話だが、廓話に興味の無い私はとくに思い入れはない。
けど、今回、甘納豆を食べるところでハッとした。
つまんで口に放り込む仕草のとき、「ヒュッ」と息を吸い込むのである。
お砂糖がついているお菓子のときって、確かに吸い込みながら口に入れるもんなあ。
いままで聞いた中で、こういう演り方した人はいなかったような。


岡本宮之助さんは思っていたより若く、TBSあたりの局アナ風。
女性と二丁三味線で最初何か短いものを演った。
訳あって「今は題名は言えません」とのこと。
女性の方の三味線がやけに澄んだ音がするなあと思っていたら、何か小さなピック状のもので弾いていた。紫文さんの会で小寿々さんが同じポジションにいたときは、ふつうのバチで弾いていたような・・・?
(後でその件に関しては明かされたが、岡本という流派でしかその小さいやつ(小バチ)というのは使っていないそうだ。)
その後「十三夜」を全編たっぷり25分ほど。
「十三夜」は樋口一葉の小説が原作だそうで、新内とかって言えばぜんぶ江戸時代あたりにできたもんだと思っていた私は「へー。」と感心。
ってことは語られているのは明治時代の情景?
他にもそういうのあるのかな?
語っている言葉ももっと聞き取れないものかと思っていたがそうでもなく、3分の2くらいは聞き取れて、情景も目に浮かんだことに驚き。
浮かんだイメージが間違っていないか気になって、帰宅してから「十三夜」のあらすじを検索してしまったが、大きな落差は無かった。
年配のお客さんの中には目頭を押さえている人がいたけれど、(邦楽のたしなみのある人が少なくなかった模様。)私はさすがにそういう聞き方はできない。
三味線に対してすでに異国の民族音楽を聞くような耳になってしまっているのだ。
ま、比較文化学的に音楽を聴いているってことで、それって別に悪いことでもない、と私は思っているのだけど、だめかしら?


「十三夜」の後、小はんさんと宮之助さんが2人並んでQ&Aコーナー。
そこで最初の演目の題名が明かされたのだが、「明烏」の後半だったそうだ。
そういえば聞き取れないなりに「時次郎」とか「浦里」という名前が出てきていたので、なんか関係あるのかなーとは思っていたんだけど。女性が多い客層に加えて子供も来ているのに、なんで廓話をやるんだろう?と思っていたらそういう理由だったわけね。
今回は落語と新内の「明烏」コラボレーション。
「お座敷に呼んで聞いたらン10万取られますよ!」と最後に小はん師。
楽器とお天気の関係、邦楽のジャンルの見分け方、新内の業界話、などなどいろいろな話があって面白かったのだけど、いかんせんやる気ゼロからは回復するに至らず。
確かに無料でがっつり聴けたんだからこの上なくお得なんだが、もっとモチベーション高めのときに見たかったなあ。
演じ手が良くても、聞き手のコンディションが悪くてはね・・・。
聴いているうちに寒気はしてくるし、のどは痛いし。


やっぱムリして遊ばず、休もう。