志らくのピン パートⅢ ネタおろしの会

落語に友達を連れて行く。
これが案外とグレートウォールなんである。
笑いのツボというやつは人によって違うので、私が面白いと思っても相手はどうかわからない。
それから、落語の場合独特の言葉も多々あり、途中でそれを説明するハメになったり、噺家が何か言うたびに友達の反応が気になり、落語どころではなくなってしまったり。
誘った責任もあるので、面白くなかったらどうしよう、とか思うし・・・だから、私が友達を誘って見に行く落語家というのは、かなり私の中で評価が安定していると言ってよい。
(菊之丞さんは微妙だな・・・。私は好きだけど、友達はどうかなあーっていうのは、まだある。)
で、本日の志らくのピンは友達を誘って行った。
志らくさんの会はわりと、落語に慣れていない友達も気を使わずに誘える。
語り口のテンポが速くて現代風であることもあるが、落語に出てくる古い言葉をその都度説明してくれることが多く、観客に無駄な勉強を強いることが少ないのである。
演者によっては「これくらい知ってるよね」もしくは「これくらい知ってろよな。」「知らない人は置いてくよ。」っていう雰囲気が濃厚なこともある。
まあ、そういうのも悪いとばかりはいえず、自分ひとりで行ってマニアックに楽しむにはイイ。
でも人を誘うときはね・・・やっぱり楽しんでもらいたいから、考えちゃうのである。
志らくさんの会は割りと、初心者に対する配慮があるように思うので・・・。
ってわけで、私が友達を連れているときは、その噺家さん(もしくは芸人さん)をかなり信用していると見てよいのです。

内幸町ホールでのネタおろしの会。
こじんまりしたこぎれいなホールで、地味だが落ち着いていてステージが見やすい感じ。

開口一番はらく太さんの「寿限無
この前一門会で師匠に言われた「語尾が下がるクセ」もかなり直っている。
うむ、努力の痕跡が見られてヨロシイ。

ちりとてちん
「蒟蒻問答」
「お直し」

ちりとてちん」は「酢豆腐」として聞いたことがある。
酢豆腐」ではもっとキャラクターの若い衆が多くて、学生の悪乗り的に若旦那に腐った豆腐を食べさせるという、「ポーキーズ感」漂う感じなのだが、「ちりとてちん」はシンプルに、登場人物は3人しかいない。
ほぼ同じストーリーなんだけど・・・。
演者としてはどっちが難しいんだろうか。
志らくさんのでは前半の太鼓持ちキャラと、後半のイヤミな知ったかぶりキャラの対比が巧み。
いや、対比させようとしているな・・・・というところは読めたけど、だからこそ楽しみに思うっていうこともあるのだ。

「蒟蒻問答」
これは小学校の頃読んだ「日本の笑い話」とかいうタイトルの本に載ってたような記憶がある。ラストシーンで気がついた。
こんなに長い話だったとは。
アホな男同士の丁々発止が楽しい。
落語の楽しさって、かなりのところがコレではないだろうか。
思えば「タイガー&ドラゴン」も楽しさも、そうだったような気がする。

「お直し」
最近はあまり演ずる人がいないという。
確かに演者が若いとリアルになってしまって笑えないような感じもある。
志らくさんでもギリギリ・・・いや、まだちょっとナマっぽかったな。
笑いが軽やかにならず、こちらの笑いも「イヒヒ」系になってしまう。
男と女のことをサラっと語るには、やはりあと10年、20年必要かもしれないわねー。
いや、面白かったんですけどね・・・原作の持つ毒気もアクも残ったままだった気がする。
これがネタおろしってことですし、もうちょっと年を取った志らくさんでもう一度聞いてみたい。

何はともあれ、友達がとても楽しんでくれて安心した。
人と落語を見に行くときは、やっぱり笑ってもらえないとねー。