市馬・菊之丞二人会

池袋演芸場での企画モノ。
今をときめく落語会きっての美男子、菊之丞サマ。
それと菊之丞出現以前、落語会一のいい男だった(自称)市馬さんの二人会である。
これで2500円だったら、観に行かないわけにいかないではないか!
ということで、いそいそと行ってきました。
会場はどちらかというと市馬さんのファンが主体だったように見えたけど、なるほど女性の比率が多かった。
男性もいなくはなかったけど、寄席ならだいたい男性8割、女性2割って感じなのに、今回は半々くらい。
それも補助席、立ち見まで出たりして。
おそるべし、「いい男」である。
最初は市馬さんの「七段目」
芝居の所作が巧いだけでなく、その裏側の心理描写の巧いこと!
女形を演じながらも、若旦那が刀を抜くのではないかとビビる小僧の心のうちが手に取るように伝わってくるのに、わざとらしくなくてスバラシイ。
その後、菊之丞さんの「唐茄子屋政談」。
これはネタおろしだそうで、途中つまづいたり言いよどむところがあったりと、いつもの菊之丞さんらしからぬ不安定さもあり。
でもまあ、それも見どころだったと言えようか。
なかなか見られるもんじゃないもんね、菊之丞さんのトチリ。
1時間近くある長い話だったが、冗長になってしまうところもあり、まだまだ磨く余地あり。
そして彼ならきっと磨き上げていくだろうから、またどこかで同じ噺をやるようなら見てみたい。
仲入り後は菊之丞さんから。
これは題名がわからないんだが、田舎侍が出てきて江戸っ子に馬鹿にされる噺。
この前鈴本でも他の人ので聞いたんだけどなー。
まぐろの刺身を「赤ベロベロの醤油かけ」、蛸の三杯酢を「イボイボ坊主のスッパ漬け」とか言うやつ。
これは菊之丞さん、余裕たっぷりな感じで緩急自在。
田舎侍の訛りから江戸っ子言葉、そして料亭のおかみさんの言葉つきまで鮮やかに演じ分けるのが見事。
菊之丞さんの女役の中でも、私はこのおかみさんキャラが好きだ。
したたかでちょっとずる賢いところもあり、商売っ気があって、人生経験豊富そうで、いじわるなところもありそうな、それでいて賢くて、どこかお人よしで、憎めない大人の女性って感じ。
うーん、やっぱりイイなあー。
演じる姿の良さにしみじみ見とれつつ、大笑いさせていただきました。
なかなか無いよぉ、うっとりしながら笑うってのは。
最後は市馬さんの「鰻の幇間
これはストーリーもよく出来てるけれど、一度聞いたらおぼえちゃうような単純な噺。
楽しませどころのキモは、だまされたあとの一八の小言だろう。
ここが巧いかどうかで、おもしろくもつまらなくもなる。
市馬さんの小言はもちろん絶品だったです。
印象に残ったフレーズ「口の中で弾む鰻」「自立できない奈良漬」など。
さすが幇間、ケチをつけるにも芸があるねえ。

2時間半の会だったが、実力派二人がたっぷり聞けて2500円は安すぎ!
二人ともどちらかというと泥臭さのないスマートなスタイルの噺家さんなので、ある意味オシャレな一席。
女性で、初めて落語を聞く人なんか連れてきてもいいんじゃないかしらん。
ぜひ二回目を期待。