梅窓院彼岸寄席と鈴本夜席

落語尽くしの一日・・・。しあわせすぎてなんだか怖いのでした。
まずは前編。友達の妹さんが勤めているお寺にてお彼岸恒例の無料寄席があるとのことで、昼頃に外苑前へ。梅窓院というお寺なのであるが、ここがえらく近代建築。パッと見にはまさかお寺とは思わないようなガラス張りのすんごいビルなのであった。
そこの本堂、仏像や木魚があったりするところの前に高座がしつらえてある。
座布団が紫色の上、異様に分厚い。クッションみたいだった。
聞けばお坊さん用の座布団だとか。
演目は以下の通り
桂才紫「たらちね」
三遊亭歌る多「片棒」
才紫さんは、うーん、まだまだ修行中って感じかな。
客席の反応を見て語り口に緩急をつけるというワザがまだ出来ないみたい。
でも声がすごく大きくて元気。そこに好感が持てないことも無い。
歌る多さんは私にとってははじめての女性噺家
落語は総じて女性が演じるのには不利な話が多いので、どうなのかなーと思っていたら案外ヨカッタ。
「片棒」の三兄弟を三姉妹に変えてのアレンジ。
どうも「女性を笑う」ということ自体なんとなくタブーな気がして、ピンの女性お笑い芸人というのは見ていて痛々しく感じることが多い。
とくに容姿がよろしくないのを、本人は開き直ってドヒャドヒャッと津波のようにえげつないギャグを飛ばしたりするタイプは、同じ女性として何かひっかるものがあって、笑えない。
これが漫才で、相手がいればその人の言葉でワンクッション入るから気にならないんだけど。
コンプレックスや自意識がチラチラ見え隠れするのがどこか湿っぽいというか。
なーんて思うことが多かったので、歌る多さんが出るときにちょっと構えていたのだが、噺家さんの場合そういうレベルの話じゃないですね。失礼。
シャキシャキと小気味いい語り口にはウェットな部分が微塵も無く・・・。
語りで話の世界に惹き込んでくれて、心地よく転がしてくれました。
噺だけではいまひとつ盛り上がりに欠けるとの配慮か、最後に皆に簡単なお座敷踊りを伝授。
ちょっとだけエッチな歌詞もあったりして、さすがお座敷芸。
落語で笑えた人もそうでない人も、それなりに盛り上がって席を立ったのでした。

そして後編。
圓朝まつりでもらったタダ券を使って菊之丞真打披露興行を見ようと、意気揚揚と上野は鈴本へ。
受付で券を見せたところ、夜席では使えないとのこと。
しかし盛り上がってしまった気持ちは抑えられず、仕方ないのできちんと料金払って入りました。
私が入ったときには6割がた席が埋まっていたが、その後ポツポツと増えて最後の頃には8割以上に。
これはいつもなのか、それともやはり菊之丞効果なのか?
ところで館内は飲食可能である。時間ぎりぎりだったためお茶も買えなかったわが身恨めしく・・・。
売店のお寿司を食べている人もいて、劇場の中はそこはかとなく稲荷くさかった。
それもまた風情かと。
舞台上には菊之丞さんがお仕事で乗っている客船を染め抜いた旗がバックに張られ、お旦からの頂きモノであろう帯や羽織が飾られていた。演目はおぼえている限りで・・・(「 」に記入が無いのは題名がわからない噺。)
古今亭菊可 「強情灸」(菊可さんのヘンな顔、ひそかに好きだわー。)
ペペ桜井 「ギター漫談」 (ギターを弾きながらハモニカを吹きながら歌う芸)
古今亭菊生 「 」
金原亭伯楽 「真田小僧」(子供キャラが生意気で可愛くて憎らしくてスゴイ)
古今亭しん弥「 」(酔っ払いが人力車に乗る噺。酔っ払いぶりがいい味すぎてたまりません。)
(ここでかっぽれあり)
翁家和楽ほか「大神楽曲芸」(日本のジャグラーですな。最初は地味だけど見ているうち夢中に)
五街道雲助 「粗忽の釘」(どこか端正、どこか男くさい。そんなムードです。)
鈴々舎馬風 「漫談」(落語会、芸能界の裏話を織り交ぜながらの爆笑漫談。オバさま方大喜び!)
仲入り
真打昇進披露口上
あした順子・ひろし「漫才」(あー、生で見られて感激!「介護交際」に爆笑)
三遊亭金馬 「不明」(気が長ーい関西人と気が短い関東人の噺。巧すぎ!)
古今亭圓菊 「宮古川」(菊之丞さんの師匠。独特のノリ。なんかくしゅくしゅしてるのが可笑しい。)
林家正楽 「紙切り」(すごいとしか言えん。なんで白紙をあんな風に切れるんだ?)
古今亭菊之丞 「青菜」(いろいろ言うけど結局旦那の見栄に付き合うおかみさんがかわいい。)
落語にはまりはじめて1年以上になるが、実は純粋な寄席に行ったのはこれが初めて。
今までだいたい独演会か企画ものの寄席、二つ目の勉強会が主だった。安いので・・。
でも今回、思いましたよ。
やっぱ、寄席は面白い!ちょっとくらい高くても、見た方がいい!
そりゃそうだよね。真打クラスの人達ばっかりが出てくるんだから。
一人一人が個性的で、ぐいぐい引き込まれる。
色物も生で見るといいもんだ。
順子ひろしなんか、ラジオやテレビでさんざん同じようなネタを見ているのに、なんか笑っちゃうんだよね。
順子さん、テレビで見るより痩せててきれいだったのが印象的だった。
出演者ほとんどが強烈なインパクトの人ばかりで、見ているのは楽しかったんだけど、トリの菊之丞さんはさぞやりにくかろうと途中から心配になってしまったよ。
でも菊之丞さんも大健闘で、見ているうちに笑いながらも胸が熱くなってしまいました。
なんというか、真摯なところがいいねえ。
ああいうルックスだから女性に人気があるのはわかるとしても、男性ファンはなんで?と思っていたんだけど、前向きに落語に取り組んでる感じと、謙虚なところがいいのかもしれない。仲入り後の披露口上では菊之丞さんをはさんで落語協会の幹部方(雲助 金馬 馬風 圓菊)が並んで、いろいろと述べ合う。
真面目にやるものなのかと思ってたら、けっこうおちゃらけたりまぜっかえしたり、楽しくやるもんなんですね。
でも新真打本人は何も喋らないので、なかなか歯がゆいものがあったりして。
しかしここで客席を見据えた菊之丞さんの目がまた素晴らしかった。
なんていうか「受けて立ちましょう!」っていう目。
まっすぐすぎて眩しくて、オネーさんは直視できませんでしたよ。
それにしても馬風さんの顔は菊之丞さんの4倍くらいあったな。