末広亭深夜寄席

このところ尋常でない金欠が続き、9月前半の落語は全滅。
おまけにラジオの演芸番組は野球でつぶれまくり。
もうほとんど禁断症状がでそうな状態で、やっと今日なんとか末広亭深夜寄席に行くことができた。
おとといなんか菊之丞さんが夢に出てきちゃったもんね。
「もっと前の方のお席にどうぞ。」なんて、高座の上から言われてしまうというリアルな夢。
もしや正夢に、と淡い期待を胸に末広亭へ。
二つ目勉強会だし・・・と甘く見ていたら、9:30開始なのに9:00の時点で大行列。いつもこうなのか?と思ったらそうではなく、やはり菊之丞効果であったようだ。
中に入ってすぐ、菊之丞さん直々に真打披露興行のチラシを手渡ししていた。心の準備が無かったので飛び上がるほどビックリした。薄い黄色のシャツにこげ茶のパンツというトラッドないでたち。
今回の演目
「壺算」 柳家小権太
お血脈」 鈴々舎わか馬
「締め込み」 柳家小太郎
明烏」 古今亭菊之丞
「壺算」は一度聞いてみたかった話。ぼんやりしていると「どこがおかしいの?」ってことになりそうだ。小権太さん、そんなに悪くはないけれど、喉が閉じている感じの発生がちと聞き苦しいか。
わか馬さんはどこかマラソン選手のようなルックス。先日の春風亭栄助さんの「お血脈」とはまた違う、飄々としたくすぐり満載で楽しかった。とくに閻魔大王のキャラの軽さと石川五右衛門の大袈裟さとの対比が笑えた。歌舞伎っぽい所作も巧い。
小太郎さん、間のとりかたがイヤらしいくらい長くて、それがまた効果的。で、この人の演じるおかみさんがイイ!ほがらかで無邪気で、弾むように元気な愛らしいおかみさん!色っぽくはないけれど、こんな女性ならかわいくてかわいくて、毎日はやく家に帰りたくなるかも。まあ、本人が太めなので、ルックスに負うところもかなりあるけど、あんなに無邪気な女性の笑顔を表現できる二つ目さんってはじめてだ。
ラスト、菊之丞さん。「待ってました!真打」と客席から声がかかる。照明のせいか、はたまた真打披露関係でいそがしいせいか、ちょっと痩せたように見えた。しかしそうした張りつめているものを背負った人間の輝きは凄い。彼が出た途端、空気が一気にさあっと変わったのがわかった。
マクラでは吉原の噺の導入として噺家としてのそーいう遊びがらみの話と笑点出演の話。一瞬だったけど円楽さんの声色がそっくりだった。
飲みに行って女性に誘われた話なんかしたんで、客席(とくに女性ファン)は固唾を飲んだが、「・・・というような女性、どこかにいませんかね?」と落としてくれてホッとする。
まあ、そんな話も「明烏」へ続く前哨戦だったわけですが。
今回は廓話。登場人物が多いが、全部声色が違うところがさすが。
女性役も当然いいんだけれど、若い衆役のとき江戸っ子言葉での小気味いい喋りはさらに生き生きして見える。達者なのだがいやらしくならず、爽やか。見た目の麗しさと相まってまるで若鮎の泳ぎを見るようだ。
「ああ、このままずっと聴いていたい・・・サゲがまだ来ませんように・・・」とつい祈ってしまう私。ずっと眺めていたくなる。
彼自身のキャラクターに生活感とか現実感とかが無いので、観客を現代から江戸の世界へ無理なく連れて行ってくれちゃうのだ。もー現実になんか戻りたくなくなるのです。
サゲのときの若旦那の表情もヨカッタ。似たような経験、あるんとちがうか?
それにしても彼はいつまで二つ目勉強会に出ているんだろう?と不思議に思っていたら、なんか勘違いをしていたらしい。実際は9月6日までの時点で真打になっているので、今日こんなところに出ていてはいけないのだそうだ。
いや、もしかしてぎりぎりまで真打披露興行のビラくばりを自分でするための作戦やもしれぬ。
頑張れ、新真打!