芝浜ワイン寄席

2003/5/?今年の1月だったか、NHKの演芸番組を何となく見ていた。
新人演芸大賞を決めるとかで、若手の芸人がいろいろとネタを披露していたのだが、その中で気になったのが、古今亭菊之丞であった。
まず容貌がなんとも言えない。現代の人とは思われない。
若旦那風というか、女形風というか、狐が化けたようないい男なのだ。
まあ、狐が化けたような、ってとこがミソで、今風のイケメンってヤツではない。
どっかのWEBに書いてあったが、落語に出てくる「役者にしたいようないい男」ていう形容が一番当てはまる。線の細い二枚目である。ちょっと中性的な感じもある。仕草がしなやかで妙に色っぽい。
で、印象に残っていて、いつか生で見たいと思っていたら、なんと\1000で毎月落語会をやっているではありませんか。
それが芝浜ワイン寄席。田町にあるワイン商社が会場なので、試飲会もかねており、木戸銭払えばワインは飲み放題というのがありがたい。
そこで至近距離で丞様(菊之丞ファンは彼をそう呼ぶらしい)がおがめるとあれば御の字ではないか。
この日は少し開始が遅れたが、菊之丞さんの開口一番から始まり、五街道佐助さんの「お見立て」、そして菊之丞さんの「三味線栗毛」といった流れ。
佐助さんの「お見立て」も面白かった。話が私好みの馬鹿馬鹿しさだったというのもあるケド。
そして「三味線栗毛」で見た菊之丞さんは思いのほか正統派というか、きちんと古典を語るタイプの端正な咄家でありました。
ムダなくすぐりや現代風アレンジは無い。でもそれが彼のルックスにドンピシャなのだなー。
変に今風にいじるより、古典は古典としてきっちり演じるのが彼は似合う。
爆笑ものの話では無かったのだが、何か満たされた感じで帰途につくことができた落語会だった。
しかし考えてみれば彼は若干30歳。
志らく一門の同年代の二つ目と比べたら、なんたる違い!
志らく一門も二つ目サン達はなんとなくキャピキャピしてて、「お笑いの人」って感じだが、丞様は「咄家」オーラがビンビンで、貫禄と風格さえあるんだもの。
どちらがいいとは言えないが(風格も貫禄も無いが激烈に面白いこしらさんもいることだし)菊之丞さんのような存在が演芸界の若手では貴重であることは間違いないだろう。