ビデオジャーナル18

コミックソングとは往々にして歌詞がおもしろい、ということにつきる。
しかし歌詞がおもしろいものが必ずしもコミックソングになるとは限らない。
すべては歌い手の表現の匙加減ひとつなのである。
というよーなことを考えたのは、ひっさびさに岡村靖幸の曲を聴いたから。


私が学生の頃そこそこ人気があり、そのパフォーマンススタイルから「和製プリンス」と呼ばれたりしていた。
私が初めて聴いて衝撃を受けたのはこの曲「BIBLE」だった。

不倫する同級生の女の子に恋する男の子の気持ちを歌った曲なのであるが、歌詞がすごい。
「きっとほんとの恋じゃない 穢れてる
ボクの方がいいじゃない
同級生だしバスケット部だし 実際、青春してるし背が179」
おいおい、ちょっと待て、おい!
「背が179」って、「バスケット部」って、「青春してるし」って、おい!
と、歌詞だけ読むと笑いが出てしまうが、彼が歌っているのを聴くと笑いにならない。
セオリーはまちがいなく、コミックのそれなのだが・・・・。
(余談だが「なんで35の中年と恋してる?」っていう歌詞が微妙にショック。中年かよ・・・。)


次の「Punch↑」は曲が開始後4分10秒くらいのときに入るセリフがすごい。
あんまりこのテの曲が得意じゃない人も、ガマンして聴いて見て下さい。

あんたいきなり何言い出すの?的な唐突さ。
かの植木等の「無責任シリーズ」の名セリフにも似たようなのがある。女の子と仕事かなんかの話をしながら歩いていて、唐突に「ところでボクと結婚しない?」っていうヤツである。
植木等に語らせたらまちがいなくコミックソングになり得る文脈なんだけど、岡村靖幸の場合笑いだけで済ませきれない何かがそこに。
いやー、こんな風に切り出されたら、思わず「はい」って言っちゃいそうだよね、イキオイで。恋愛を制するもの、それは唐突さである・・・と、思う、ホント。
テクニックで使う人もいるけど、岡村靖幸(の歌のキャラクター)の場合テクではなく本気。
人によっては「何、アツくなってんの?おっかしー。」と笑っちゃうポイントでもあるし、「ちょちょちょちょっとままままって。じょじょじょ冗談やめて。」と焦りつつ陥落するツボでもある。
お笑い的には「ボケ」要素だが、非常にアグレッシブなボケである。アグレッシブなボケはツッコミの立場をも揺るがす。無敵なのである。


この人、決してカッコよくないのだが、気になる顔。
女の子たちは友達同士では「気持ち悪い」「ありえない」なんていいながら、実は気にしてしまうのだ。これも色気なのか?
私的には「よく動く白眼の多い目」ってのがけっこう気になるツボです。
邪悪にも見え、ピュアにも見え、男女問わずこういう目つきの人って妙な色気がある。女性では武田久美子林葉直子あたりこーゆう眼。


さて、ネット上の動画では発見できなかったが、実は岡村靖幸の世界はもっとスゴイ。有り体に言ってしまえばもっとエロでもっと変態なのだが、奇跡的にコミックソングになってない。
再び言うが、歌詞がおもしろいものが必ずしもコミックソングになるとは限らない。すべては歌い手の表現の匙加減ひとつなのである。


よく比較されるプリンスの動画もついでに。いい感じに気持ち悪い。

ところで、信じられないことにプリンス、マドンナと付き合っていた時期がある。が、「性的にノーマルすぎる」という理由でふられているのだそうだ。
すべてのエネルギーを表現活動に費やしてしまうからだろう。案外そんなもんかも。許してやれよ、マドンナ。
しかし、同じパフォーマーでありながら、そう言い放ったマドンナのエネルギーはあれだけの表現活動に使いまくってなお余りあるってことになる。
女の方が貪欲なんだナ。